「核開発」双方の立場は

藤森キャスター:
今の話からすると、ルールを守らず、国際社会に反対されながらも、核開発をやめなかったイランに対する懸念や問題があるのでは?

須賀川さん:
外形的事実をおさらいすると、非常に興味深い。

核兵器を保有しているかどうか。イランはまさに今、開発中。イスラエルに関しては公表していない。ただ、否定もしていない。国際的にも保有していること自体、公然の秘密となっている。

NPT(核不拡散条約)。イランは加盟している。イスラエルは加盟していない。

IAEA(国際原子力機関)の査察をイランは受け入れている。イスラエルは国連安保理から査察の要請を以前受けているが、これを拒否している。

この状況をみたら、あれって思う方がいるかもしれないが、そもそもイランは核開発の約束事、ルールブックを持ちながら、ルールを破っている状態。イスラエルは、ルールブックそのものをほっぽり出している。

小川キャスター:
どこに軸足を置くかで見方もがらっとかわってきますけども、中室さんいかがですか?

中室牧子さん:
かねてからIAEAの査察や監視がうまく機能していないと感じてきましたが、その点はいかがですか?

須賀川さん:
非常にいいポイント。IAEAは完璧な機関ではない。これまでもたくさんの穴はあった。だが、限界があるとは言え、この限界もイスラエル側は主張している。IAEAは原子力施設を監視できる唯一の国際機関なので、それを無視してしまうと、国際基準、国際秩序そのものが崩れかねない。

パレスチナでも同じことが起きている。どういうことかというと、様々な国がイスラエルのパレスチナやガザへの攻撃に違法性をとなえているが、「悪の基準は自分が決める」というイスラエルのスタンスと、それをコントロールできない国際社会は自ら民主主義の根幹を揺るがしてしまっているともいえる。

ガザではきのうも144人が殺害された。5万5000人以上の死者全員が、イスラエルの言う「テロリスト」なのか。ここは問い続けなければいけない。

藤森キャスター:
こうした状況で国際社会はG7サミット、たとえばこの間、共同声明が採択されました。「我々は、イスラエルは自国を守る権利を有することを確認する」と、この点で言えばイスラエル寄りなんですよね。

須賀川さん:
その通りなんですよ。主権国家としてイスラエルの自衛する権利は認められるべき。賛成です。ならば、先制攻撃された主権国家イランの自衛権はどこにいったの?このあたりもしっかり考えていかなくてはいけないし、問い続けなければいけないと思う。

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<プロフィール>
須賀川 拓
23ジャーナリスト 前JNN中東支局長
ガザやアフガンなど取材
「ボーン・上田記念国際記者賞」受賞

中室 牧子さん
教育経済学者 教育をデータで分析
著書「科学的根拠で子育て」