旧姓の通称使用で“お困りごと解消”になるのか

一方で、旧姓の通称使用を拡大することで問題を解決しようとする動きもある。

日本維新の会は現在の夫婦同姓は維持しつつ、旧姓を戸籍に記載することで通称使用に法的効力を持たせる法案を提出している。

日本維新の会 藤田文武 前幹事長
「法的安定性もあるし、日常生活に対してのお困りごと解消という意味では、必要十分」

しかし、問題解決のためには選択的夫婦別姓の実現が必要だと訴える人たちがいる。

20年以上、弁護士として働く湯浅紀佳さんは16年前に結婚し、姓を夫の「國井」に変えたが、仕事では旧姓の「湯浅」を使用している。

弁護士 湯浅紀佳さん
「(姓を)変えなきゃいけないのが当たり前だと、そのときは思っていまして。あとは通称使用ができればそれでいいぐらいの、安易な気持ちだったんですよね」

すると4年前、仕事で大きな支障が生じた。

所属事務所がもつアメリカオフィス代表就任の話が持ち上がった。

ビザの申請は、パスポートと同じ「國井」でしかできないが、その他の必要な書類は全て「湯浅」の表記になっていたため、ビザの取得は認められなかった。

弁護士 湯浅紀佳さん
「日本での弁護士としての業績を証明して、認めてもらって取るビザなんですけど、出せるものが『湯浅』しか当然ないので、『なんですか?』みたいな感じになってしまって」

村瀬健介キャスター
「アメリカのビザ当局にとっては、湯浅さんの弁護士実績が認識されない状態になっている?」

弁護士 湯浅紀佳さん
「そうですね。偽名じゃないですけど、名前2つ持ってる怪しい人みたいな扱いを途中で受けたりとか」

「湯浅」という旧姓が使えないことに直面して、こう感じたという。

弁護士 湯浅紀佳さん
「そうなって初めて『自分も名前変えちゃったんだな』と。(通称使用によって)仕事で(姓を)変えなくて済んだので、何か(旧姓が)残ってる気がしてたみたいな。絶対に変えないと結婚できないっていうのは、本当にアイデンティティへの侵害だと思いますし、それは男性女性問わず、非常にひどい状態なんだなって思うんですよね」

村瀬キャスター
「ご自身にとって本名は何だというふうに認識されている?」

弁護士 湯浅紀佳さん
「うーん…難しいですよね。でも自分としては、湯浅紀佳なんだと思う」