5年後に事件が動く

事件が再び動いたのは5年後の1991年でした。
神谷が3億4000万円の横領事件(別件)で逮捕されたことが契機となり、警視庁が5年前の死亡事件を再調査。その結果、大野助教授が保管していた血液からトリカブト毒が検出されたのです。

事件解決まですぐだと誰もが思いました。ところが…。

「鉄壁のアリバイ」が解決を阻む

ところが、おかしなことがあります。トリカブト毒(アコニチン)は猛毒でわずか2-3mgで死にいたります。しかも即効性があって、摂取して15〜30分後に症状があらわれるというのです。

トリカブトは非常に美しい花を咲かせますが、全体に毒を含み、特に根に猛毒をもつといわれます。

ところが、妻が苦しみ始めたのが神谷と別れてから1時間40分後。毒物摂取から症状が出るまで20分あるとしても、約80分のタイムラグがあるのです。
そのとき、神谷は石垣から離れた沖縄本島、那覇にいました。
神谷にはいわば「鉄壁のアリバイ」があるのです。(後編に続く)