不妊治療は“法律婚”に限定?不安の声は「出自を知る権利」以外にも

この法案について不安の声が上がっているのは、子どもたちの「出自を知る権利」の話だけではありません。

法案では、第三者の精子・卵子を使用した不妊治療を受けることができるのは「法律婚」をしている夫婦に限定。それ以外の人たちは治療の対象外になっていて、事実婚の男女や同性カップル、選択的シングルマザーなどから懸念の声が上がっています。

がんで闘病中の富田さん(26)もその一人です。がん治療にかかわる高額な医療費の自己負担額が世帯の所得によって変わるため、法律婚に踏み切れないでいます。

富田さん
「将来のことを考えたときには法律婚の方が自分に何があっても安心なんですが、生きるために事実婚を選んでいるという感じです」

パートナーとは将来、卵子提供を受けて子どもをもうけることを話し合っていますが、法案が成立すれば「不妊治療を受けられなくなってしまう」と不安を感じています。

富田さん
「子どもを持てるかもしれない。将来に向かって前向きに頑張ってみよう、治療してみよう、きっとつらいことばかりじゃないと思ってやっているのに、その選択肢を奪われるというのは、どこを目指して頑張っていけばいいのかが迷子になる感覚ですかね」

野党の反対もあり、法案の本格的な審議が始まる見通しは立っていませんが、生まれてくる子どもと、子どもを望む人に寄り添った議論が求められています。