「歪めずに届ける」報道と演技の共通点

日曜劇場『キャスター』より、音尾琢真

俳優としての音尾もまた、表現の中で“伝える”という行為に向き合い続けている。そんな彼が大切にしているのが、「正しく届けること」だ。

「さまざまな考え方があっていいと思う」と前置きしながらも、音尾は自身の思いをこう吐露した。「俳優の仕事って、脚本に書かれている言葉や空気を、なるべく歪ませずにそのまま見る人に届けることだと思うんです。演出や編集、さまざまな要素が加わる映像作品だからこそ、最初に脚本家が込めた思いはしっかり守っていきたい」。

脚本という“原稿”を読み解き、そのメッセージを1人でも多くの視聴者に“誤解なく伝える”。その姿勢は、まさにジャーナリスト的とも言えるかもしれない。

「自分がやっていることは、ある意味“報道スタイル”に近いのかもしれません。現場で起きていることを自分なりに噛み砕いて、歪めることなく、誠実に伝える。見る人に考えてもらうための、一要素でありたいんです」と語る。

膨大な情報にさらされる中で、誰もが簡単に“発信者”になれる現代。だからこそ音尾は、「視点の偏り」への警戒心を強く持つ。

「どんなに立派な報道機関やメディアでも、そこには必ず“人の視点”が入っている。つまり、情報は常に何らかのフィルターを通っているんです。だからこそ、伝える側はその影響力をしっかり自覚しなければいけないですし、受け取る側にも“これは誰かの視点を通した情報なんだ”と認識してもらいたい」。

「まさにこのインタビューもそうですよね」と音尾は言葉を添えた。発信するだけでなく、情報を受け取る立場でもあるからこそ、多角的な見え方を想像している。その姿勢は、情報があふれる今の時代において、私たちが持つべき視点をいま一度再考させてくれる。

日曜劇場『キャスター』より、音尾琢真

本作で演じたプロデューサーという役柄を通して見つめた報道の現場、その中に垣間見える“伝えること”の本質は、自身の俳優としての在り方にも、しっかりと根付いている。