コメ担当大臣は「米将軍」になれるか

一番最初の折れ線グラフに戻ってみると、08年のピーク以降、MA時代の「インフレ(物価高騰)」関心度は2割程度。それが22年に43%と急激に高まり、さながら地殻変動で隆起した断層のよう。

バブル崩壊後の「失われた30年」を経て、すっかり物価の安い生活に慣れていた私たちに、物価高騰の波が押し寄せている今。「物価高に見合う賃金を」と賃金が上昇し、その人件費が転嫁されて価格が上昇、それがさらなる賃金上昇を呼び、という好循環が期待されるものの、果たしてどうなるか。

第一次石油危機の74年では、切り詰めにくい食費の代わりに衣服やレジャーの節約を人々が意識。その意識は、あらゆる物の値段が上がっていく今も同じと思いますが、切り詰めにくい食費のど真ん中であるコメの値段が高騰している今、深刻に感じる度合いは結構強いかも知れません。

江戸時代、コメの価格変動を防ぎ、調整を心がけた八代将軍・徳川吉宗は「米将軍」と呼ばれました。今、「コメ担当大臣」なる人が調整に躍起になっていますが、果たして歴史に名を残す働きをしてくれるでしょうか。

注1:TBS生活DATAライブラリ定例全国調査・TBSテレビ担当分の調査対象者は、東京駅起点30km圏(東京・千葉・埼玉・神奈川)在住の13歳以上の男女です。年齢の上限は1993年まで59歳、2014年まで69歳、15年以降74歳と順次拡大しています。今回の分析では時系列変化を見るため、集計対象を20~59歳に揃えています。

注2:TBS生活DATAライブラリ定例全国調査は、1999年まで5月と10月の年2回実施でした。それが2000年に11月実施に一本化され現在も継続しています。

注3:MAは「複数回答(multiple answers)」の略称で、回答数を制限した「制限複数回答(limited multiple response)」のうち、3つまで答えさせる形式(three answers)を「3A」と呼んでいます。本コラムの過去の記事「『いくつでも、お答えください』にどう答えるか」では、MAと3Aで結果の出方がどう違うか、詳しく検討しています。

引用・参考文献
● 「消費者物価指数」総務省統計局ホームページ
● 「『食品主要105社』価格改定動向調査―2022年動向・23年見通し」帝国データバンク業界動向
● 「『食品主要195社』価格改定動向調査―2023年動向・24年見通し」帝国データバンク業界動向
● 「定期調査:『食品主要195社』価格改定動向調査―2024年通年/2025年見通し」帝国データバンク業界動向

<執筆者略歴>
江利川 滋(えりかわ・しげる)
1968年生。1996年TBS入社。
視聴率データ分析や生活者調査に長く従事。テレビ営業も経験しつつ、現在は法務・コンプライアンス方面を主務に、マーケティング局も兼任。

【調査情報デジタル】
1958年創刊のTBSの情報誌「調査情報」を引き継いだデジタル版のWebマガジン(TBSメディア総研発行)。テレビ、メディア等に関する多彩な論考と情報を掲載。原則、毎週土曜日午前中に2本程度の記事を公開・配信している。