4区は伊藤、5区は松枝とトラック代表選手がトップ浮上を狙う
4区はHondaが東京五輪、世界陸上オレゴンと2年連続10000m代表の伊藤を起用した。Hondaは3区の青木でリードするか、トップと小差で4区につなげば、4区の伊藤でそれなりのリードを奪うだろう。しかし富士通の4区・横手健(29)も今季は好調で、伊藤といえど大きく引き離せないかもしれない。そうなれば富士通は、距離は短いが5区に東京五輪5000m代表の松枝博輝(29)を起用している。
富士通・高橋健一駅伝監督は「4区までは負けている可能性がある。5区と6区で『なんとかしろよ』と2人には言っている」という。
一方、Hondaの小川監督は「5区の森(凪也・23)には胸を借りるつもりで走ってほしい。前後に強い先輩がいるので、プレッシャーを感じることないよ、と伝えました」と明かす。
5区の五輪代表vs.ルーキーの対決は、中盤の見どころの1つだ。
そして5区で2強に迫るとすれば、コニカミノルタの砂岡だろうか。
コニカミノルタは3区の、マラソンで世界陸上オレゴンに出場した星岳(24)が、駅伝でも安定した力を発揮する。1区の名取燎太(24)、4区の米満怜(24)と、学生駅伝で活躍した2人が力を発揮すれば、上位で5区につなぐことができる。そして5区の7.8kmなら、5000m13分19秒92(日本歴代12位)の砂岡のスピードが生きる。
コニカミノルタは5位が目標だが「5区までに5位以内を固めて、6、7区でチャンスがあれば、さらに積極的に行きます」と酒井監督。ニューイヤー駅伝優勝8回のコニカミノルタの、復活へのプロセスが見られそうだ。
6区はスピードランナーvs吉田、7区の市民ランナー細谷にも注目
6区も富士通とHondaの2強対決が展開すると思われるが、前述のコニカミノルタと、さらにはGMOインターネットグループも、優勝争いに絡んでいるかもしれない。GMOインターネットグループは3区に、千葉大大学院卒業のルーキー今江勇人(24)を起用した。今季は10000mで28分13秒44まで自己記録を伸ばしてきた。「今江が3区を走れれば、ニューイヤー駅伝ではどこの区間でも起用できる。このあと10000mで27分45秒も狙うレベルに来ている」と亀鷹律良監督。
4区・下田裕太(26)、5区・一色恭志(28)、6区・吉田祐也(25)、7区・橋本崚(29)と、マラソンで実績のある選手が並ぶ。
「目標は3位通過ですが、下田が元気なので今江で少し後れても下田で盛り返せる」(亀鷹監督)
箱根駅伝で4区区間新を出したことがある6区の吉田で、GMOインターネットグループがトップ争いに加わる可能性はある。塩澤稀夕(24)、川瀬翔矢(Honda・24)、清水歓太(SUBARU・26)ら、スピードランナーたちと吉田の対決も6区で注目される。
2強の争いだが、富士通は高橋駅伝監督が言うように、6区の塩澤で決着を付けたいだろう。それに対しHondaは、前回3区区間賞の小山をアンカーの7区に置いている。今季の小山は東京マラソン、北海道マラソンと走っている。どこまで駅伝仕様になっているか、あるいはマラソンの持久力を活用した走りができるようになっているか、が勝敗に影響しそうだ。
優勝争いとは別のところになるが、7区には市民ランナーとして活動している細谷翔馬(22・K-project)が出場する。箱根駅伝で2年連続山登りの5区で区間賞。3月の東京マラソンで2時間09分18秒の学生歴代3位と好走した。実業団駅伝に舞台を移してどんな走りをするか、注目したい選手だ。
日本代表レベルの選手にもトラックのスピードランナーもいれば、駅伝より長いマラソンで活躍する選手もいる。世界大会のメダルも狙える外国人選手もいれば、市民ランナーもいる。埼玉県を横断する東日本実業団駅伝は今年も見どころが満載である。
(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)
※ 写真左は塩尻和也選手(富士通)、右は青木涼真選手(Honda)