全国で雷の被害が相次ぐ中、NTTがドローンを使った「空飛ぶ避雷針」の実験に、世界で初めて成功したと発表しました。今後、施設や人への被害を減らす効果が期待されます。

宮崎市では2024年4月、練習試合中だった熊本県立鹿本高校のサッカー部員が落雷に遭って生徒18人が病院に運ばれました。また、2025年4月には奈良市にある学校のグラウンドでも中高生6人が雷に打たれる事故が起きています。

インフラへの被害も含め、こうした落雷被害を減らそうと、NTTが実験に成功したのが「空飛ぶ避雷針」です。

NTT宇宙環境エネルギー研究所 枡田俊久主任研究員(40)「ドローンを使って雷を導いていくこと自体が世界に例がなく、今回実験が成功したことで、世界で初めてになる」

きょう(5月29日)、千葉県で開催された学会で、その実験の成功が報告されました。

実験は2024年12月から2025年1月にかけて島根県で実施されました。

雷雲が接近したタイミングでドローンを飛ばし、雷を誘発させたうえで、機体から地上に延ばした金属製のワイヤーを通じて地面に電流を誘導する仕組みです。

画像提供 NTT

ドローン自体は市販品ですが、本体に強い電流が流れないように、周囲を金属製の棒で囲うことで故障や誤作動を起こさず、何度も使えるということです。

現時点では施設などへ雷の被害を完全に防ぐにはさらなる改良が必要で、ドローンを都市部で使うことへの法的な課題などもありますが、NTTは2030年度ごろの実用化を目指していて、まずは風力発電用の風車を守ることなどを想定しています。

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枡田主任研究員「これまで、雷で会社のインフラ設備が故障し、各地で雷で不幸な事故もかなり起きているので、そうした人たちの命をきちんと守りたいというのがわれわれの根本にある」

NTTは今後、雷の発生予測の精度を高める取り組みも強化し、将来は誘導した雷のエネルギーを充電することも視野に入れているということです。