アンパンマンが日本で圧倒的に支持される理由
野村:
アンパンマンはなぜこんなに大きな市場を作り出したのですか?
中山:
他の子ども向けコンテンツでも共通するのですが、日本では大人が本気で子ども向けを作っています。特にやなせさんは容赦ないですよね。「子どもはこんなものだろう」というのは一切ない。
そして『アンパンマンのマーチ』の詩ですよね。全国民に覚えてほしいぐらいのものですが、あの詩も全部やなせさんが作っています。やなせさんは『手のひらを太陽に』なども作詞されていますが、やはり戦争体験とか、善悪とは何かということも、込められています。大正、昭和、平成、そして令和まで含めた100年の日本が詰まっている。
その言葉通りに子どもに浸透しているわけではないと思いますが、その深さが長く愛される理由なのではないかなと思っています。一時的な流行には収まらないぐらい思想と人生が詰まっています。
野村:
なるほど。アンパンマンのキャラクターの親しみやすさ、ストーリーも分かりやすいですが、掘れば掘るほど、大人も唸るような思想というのが裏側にあるということですよね。
中山:
そうですね。子どもしか見られないから逆に5分10分でまとめなければいけないし、短い時間でやっていますが、そういうリクリエーションの中に何か思想がこもっていて、大人を魅了する部分があります。
そして私がポイントだと思う点ですね。イギリス、オーストラリアや中国などのいろんな子ども向けコンテンツを見ましたが、これだけ出色の出来というか。こんな作り方をしたものは見たことがないなと思っています。