若手弁護士が直面した“仕事の現実”

金曜ドラマ『イグナイト -法の無法者-』より、間宮祥太朗
金曜ドラマ『イグナイト -法の無法者-』より、間宮祥太朗

こうして弁護士を目指した福島氏は、ロースクールを経て司法試験に合格。晴れて弁護士となった。最初に所属した事務所は、3年で巣立つことを前提にした制度を採用しており、さまざまな得意分野を持つ弁護士が集まる環境だった。

若手は在籍中にスキルを身につけることが求められ、給与制ではなく売上制。自分で獲得した案件の報酬がそのまま収入になる仕組みで、言い換えれば“稼がなければ食べていけない”。とはいえ、司法試験に受かったばかりで、スキルも経験も、ツテもない状態だったという。

本作に登場する“ピース法律事務所”のように、依頼者に“営業をかける”スタイルは誇張もあるが、実は現場感として近い部分もあると福島氏は語る。

「さすがに依頼者を“焚きつけ”たりはしません(笑)。でも、仕事をするには、手元に仕事が来なければ始まらない。とはいえ、人や企業の人生を預かる以上、生半可な知識や姿勢ではできません。そこが難しさであり、現実でもあります」。

迷っている今が相談のタイミング

金曜ドラマ『イグナイト -法の無法者-』より、仲村トオル

ドラマでは、「こんなことで訴えられるのか?」とためらう依頼者の背中を押す場面が描かれるが、現実的にはどうなのだろうか。

「“傷ついた”、“これってどうなの”という感覚があるなら、それは相談のタイミングなんです。“まだ法的に動けるかどうかは分からないけど、気持ちを整理したい”。それでも十分、相談する意味はあります」と福島氏。

「声を上げるための武器」が法律であり、弁護士はそのために存在しています。「相談のタイミングは“今”。まずは動かないと何も始まらないし、弁護士としても材料(証拠や事実)を見てみないとわからない。だからまずは、ありのままの気持ちを持って来てくれたらいいんです」。

そして、証拠が少なくても、「点」として存在している事実を「線」でつなげて説得力のあるストーリーに仕立てる。それが、弁護士の腕の見せどころだという。

「コミュニケーションアプリの履歴や、SNSの書き込み、日々のメモ。そういう“点”の証拠でも、ストーリーとして“線”でつながれば力になる。裁判って、証拠と物語の整合性が問われる場なんです」。それと同時に、法廷で問われるのは、感情と事実の交錯。ドラマのような派手さはなくても、現実にはドラマ以上のドラマがある。