1931年に浦上の1人の信徒が6億円の資産を投じて制作した二十六聖人の無声映画が90年のときを超え、2日、長崎市の浦上天主堂で公開されることになりました。
アメリカで上映された"初の日本映画"と言われる作品です。

日本二十六聖人

国内のキリシタン信仰のシンボル「日本二十六聖人」。西坂の丘が聖地として整備される30年前、1本の映画が長崎から世界に送り出されました。

「殉教血史・日本二十六聖人」

浦上の一信徒が15万ドル──今にして6億円の私財を投じて制作した『白黒無声映画』です。

今年はバチカンとの国交樹立80周年。交流の歴史を紐解くプロジェクトを進める角川文化財団によって90年前に作られたこのサイレント映画が長崎で再上映されることになりました。

角川文化振興財団 広報担当 木ノ内雅章さん

角川文化振興財団 広報担当 木ノ内雅章さん「アメリカで公開された初めての日本映画という事で紹介されていたりして、結構アメリカでは非常に沢山の人に見られた。バチカンと日本の文化交流を推進する文化事業を行っておりまして、活動弁士付きで上映する非常に貴重なイベントを行うことになりました」

映画を作ったのは浦上の信徒 平山 政十さん。ソウルでの牧場経営で成した莫大な富を『天に積む宝』とすべく映画制作を決意。
撮影の協力を取り付けるためバチカンに渡り、教皇に特別謁見を果たします。

さらにバチカン大使館の仲介でイタリアの独裁者、ムッソリーニにも面会、得意のフランス語で交渉し、撮影の許可を取り付けました。

この時のことを政十さんは『多大の援助をもらいローマでの使命を成功させた』と自らが送ったハガキに記しています。

日本二十六聖人記念館 宮田 和夫さん「ムッソリーニに撮影許可をもらって二十六聖人の列聖式を再現したシーンが、日本でではなくローマで本当に撮影されている。スペクタクルのシーンもあればチャンバラのシーンもある。エンターテインメントとして作っている。少しでも二十六聖人を通してカトリックを身近に感じてもらいたい(という思いで作られた)」

豪華キャストでおくる96分間のエンターテインメント。主役は時代劇界の大スター「片岡 千恵蔵」。細川ガラシャ役は妖艶な伏見 直江。昭和期を代表する映画女優、山田 五十鈴も出演しています。衣装やメイク、セットの細部まで作りこんだこの映画は、日本だけでなくアメリカやヨーロッパ各地で上映されました。

公開されたのは満州事変が起きた年。
カトリックの信仰は敵国の教えではなく「真理を貫く大和魂」だと国民に伝えるため、そして日本で息づく信仰を世界に伝えるために1人の浦上の信徒が、その人生をかけて作り上げた映画です。

角川文化財団 木ノ内さん「アメリカやヨーロッパまで上映に駆け回るのは相当なエネルギーだったと思う。普段、見ることができないのでぜひ皆さんに見て欲しい」

この映画をきっかけに世界中で”西坂”の聖地化を求める声が高まり今の公園の整備と2人のローマ法王の長崎訪問にもつながりました。
平山政十さんが作った映画「日本二十六聖人」は2日、政十さんの生誕地浦上で上映されます。

サイレント映画「日本二十六聖人」は2日午後2時半からギターとフルートの楽団付き、活動弁士のもと、浦上天主堂で上映されます。
またバチカンに眠る資料を掘り起こした研究成果が発表される公開シンポジウムは今月10日に行われる予定です。