5月18日に東京・国立競技場で開催されるゴールデングランプリ(以下GGP)男子100mに日本のエース、サニブラウン アブデル ハキーム(26、東レ)が登場する。対するのは19年のドーハ世界陸上金メダリストのクリスチャン・コールマン(29、米国)。自己記録は9秒76で、9秒96のサニブラウンにとっては強敵だ。そのコールマンに対してサニブラウンがどういう戦いを挑むのか。そしてサニブラウンのGGPの戦いは、東京2025世界陸上につながっていく。
パリオリンピック™で離された課題の30~70mの走りをチェックする
今季のサニブラウンは例年よりスロースタートだ。3月に200mに出場したが、「試合にカウントしたくない」という結果。4月のダイヤモンドリーグ厦門大会は10秒42で10位、5月の世界リレー選手権4×100mリレーは予選3組の1位通過(37秒84とその時点の今季世界最高タイ)に貢献したが、1走の区間タイムとしては4番目だった。
「まだ去年ほど上がっていません。走りのポイント(部分)、ポイントでは仕上がってきているのですが、レース全体として、走りのパッケージとして完成に近づけていかないといけない段階です」
中でも一番の課題は、昨年改善できたスタートから40mの走りを、40~70mにつなげていくことだという。
「それが足りなかったのがパリ五輪(準決勝3組4位)です。40~70mは何もしていません。もう少し加速に乗るべきところを、一定のスピードでしか走れませんでした。そこの30mは無駄にできませんね。そういう練習を冬期にやってきましたが、まだ身に付いていません。練習でやっていることをレースでも出せる人が、世界のトップになっています」
繰り返し練習し、練習ではできることもあるという。それをレースで出せるかどうか。GGPでもそこを試す。
「世界陸上のある9月から逆算して準備をしています。(今季は)レースも出ながら練習もしっかり行う。1回1回のレースも、1日1日の練習も無駄にできません」
現時点で手応えは得ていないが、何かきっかけをつかめばGGPで快走する可能性もゼロではない。
コールマンは世界陸上2大会で1つ上の順位
一番の強敵はコールマンで、9秒93の記録を持つ若手有望株のクリスチャン・ミラー(19、米国)も、シニア世界大会の実績こそないが自己記録ではサニブラウンを上回る。特にコールマンはドーハ世界陸上優勝時がそうだったように、スタートから序盤の強さを武器とする。コールマンはサニブラウンのことを「フロリダ大の頃から知っていた」という。
「個人的に親しいわけではありませんが、その頃からレースを見ていました。パワーのある選手という印象です。ここまで成長して、世界陸上やダイヤモンドリーグという同じ舞台で走ることができるのはうれしいですね」
コールマンも今季は、4月に走った10秒06がシーズンベストとスロースタートだ。「記録にはこだわっていません。自分のレースを実行して勝てればいい」と前日会見で話した。コールマンが自身の走りを実行できたら、優勝の確率がかなり大きくなる。
そのコールマンに対し、サニブラウンは善戦してきた。22年オレゴン世界陸上はコールマンが6位でサニブラウンが7位、23年ブダペスト世界陸上はコールマン5位でサニブラウン6位。0.05秒差と0.12秒差だった。
昨年スタートの改良に成功したサニブラウンといえども、序盤でコールマンに先行するのは難しい。しかし、課題としている40m以降の加速ができれば、サニブラウンが得意とする終盤の勝負に持ち込むことができるかもしれない。サニブラウンとコールマンの差に注目して観戦すると面白いかもしれない。