イルカたちにとっても試練だったコロナ禍
実は、オキちゃん劇場で働く飼育員たちにとっては、同じようなピンチがコロナ禍に起きていた。
お客さんの来園がなくなりイルカショーは中止に。毎日餌やりだけが続いたある日、オキゴンドウのゴンちゃんが餌を食べなくなってしまった。

「彼らの生活リズムをある日、人間がいきなり変えてしまった。そういうのも健康状態に顕著に出てしまって」
そこから黒須さんたちは、毎日同じ時間に、お客さんのいないイルカショーを開いた。
「イルカショーって、イルカたちにとっても、意味のあることなんだ、って。それは衝撃でした」
その逆もある。オキちゃん劇場では、イルカショーへの参加をイルカたちの意思に任せている。イルカたちの体調への気遣いだけではなく、意思を持つ生き物として尊重しているのだ。
徹底した健康チェックに食事管理、そしてイルカへの敬意。あらゆる積み重ねの上に、オキちゃんとムクは飼育50年を迎え、「沖縄観光のハイライト」を描き続けている。
イルカたちが見事なハイジャンプを決める光景は、こうした舞台裏を知れば知るほど、より美しく見えてくるのかもしれない。(取材 山城健太)
