働く女性が活躍する為に「ごめんね」を「ありがとう」に変える会社へ

―――及川さんの若い頃は仕事の占める割合がほとんどで、家は寝るだけという世代だったと思うのですが?
 私は、母親で仕事をしていて、割とわがままに仕事をしてきたつもりですけど、それでも子どもには「家にいられなくてごめんね」「残業してごめんね」だとか、会社には「100%の力で仕事できなくてごめんね」だとか、いろんな人たちに「ごめんね、ごめんね」と言いながら仕事してきたんですね。それを「こういう制度を作ってくれてありがとう」や「この方法を進めてくれてありがとう」だとか、全部「ありがとう」に変えていける会社が、ダイバーシティー&インクルージョンの会社であり、社会なのかなと思っています。

―――「ごめん」を「ありがとう」に?
 とにかく関わる人たちがハッピーになってもらいたいというのがあって、去年「ポーラ幸せ研究所」を設立したんですね。幸せというものをもっとしっかり研究することで、なにかしら人々に還元できることがあるんじゃないかと思ったんです。もちろん商品もそうですし、カウンセリングや販売やお客さまとの関わり方や働き方改革、そういうものに全部、生かしていけるようにと考えています。当社の企業理念に「美と健康を願う人々、および社会の永続的幸福を実現します」というのがあるので、「よし、企業理念で幸福と言っているんだから、幸せを研究してみんなに届けたい」という思いに至りました。

コロナ禍で経験「人は人と関わりたい」をビジネスチャンスに

―――アフターコロナで期待することはありますか?
 私たちがこの間に自覚したのは「やはり人は人と会いたい」ということだし、密度の濃い人間関係は決して悪いことではないということです。オンラインの便利さは新しく手に入れたツールとしてこれからも持ち続けるだろうし、遠くの人との距離が近くなったのは1つ新しいことだけれど、そういうものを使いながらもリアルな人との関わりを大事にしながらやっていく。リアルな店舗で肌を触ってお手入れする楽しさや心地よさとか、やはり誰かと関わりたい、関わることで自分を高めていきたいということを、もっともっとビジネスチャンスに生かしていきたいとすごく思いますね。

―――ポーラの強みはどういった点ですか?
 研究開発力の強みですよね。私たちの商品の中には日本初がたくさんあるということと、一生懸命にみんなで考えながら新しい商品を生み出しているということですね。どんどん女性も男性も進化していますから、その気持ちに寄り添いながら次の商品を作っていく力があると思っています。

「お母さんは、なんだかんだ言って成長しているよ」娘からの言葉に勇気づけられる

―――これからの夢は?
 娘が最近言った名言があって、それは、娘がずっと私が働いて色々やっているのを見ていて「1つだけ希望がある」って言うんですよ。「大人になっても人間は成長するんだね」と言ってくれて。「色々あったけど、お母さんは、なんだかんだ言ってちょっとずつ成長しているから、私も働いて大人になってからも成長できると思ったら、ちょっと希望が持てるよ。だからきっとこれからも頑張ればいいことあると思う」と言われました。だからまだまだ成長したいです。

―――最後に、及川さんにとってリーダーとは?
 みんなの元気を作る人。パワーの源だと思います。どうしても仕事って1人ではできなくてチームでしますよね。モチベーションを作り出したり、チームのみんなをエンパワーしたり。そういう役割を担う人だと思います。
■及川美紀 1969年、宮城県石巻市生まれ。1991年、東京女子大学文理学部卒、ポーラに入社。育児と仕事を両立、エリアマネージャーや商品企画部長などを経て2020年、社長就任。

■ポーラ 創業者で化学者の鈴木忍は、独学で1929年にハンドクリームの製造を開始。1951年、日本で初めてとなる美白効果をうたった化粧品を発売。売上げは1000億円を超え、社員や販売員数は約3万5000人。


※このインタビュー記事は、毎月第2日曜日のあさ5時30分から放送しているMBS「ザ・リーダー」をもとに再構成しました。