「私、頑張っている!」自信満々で受けた昇進試験で大きな挫折

―――当時は仕事に対して自信に満ち溢れていたんですね。
 「子どもがいるのにこんなに働いている」とか「この仕事は私が一番うまくできる」とか。当時の私はいろんな意味で幸せな誤解をしていた時期だったんですね。「私、頑張っている」って。頑張っている私がいることをとにかく気付いて評価してほしいと思って昇進試験を受けるんですが、見事にそんな気持ちで受ける人は、会社は見抜くんですよね。

―――天狗になっていた鼻が思いっきりへし折られた?
 へし折られたのと、へし折られて反省するんだったら良いんですけど「会社がわかってくれない病」になっちゃったんですね。「私の仕事振りをみていない」とグレたんです。すごくグレました。会社に入ってから一番。そんなある日、ずっと私を見てくれていたビジネスパートナーさんに呼び出されまして「及川さん、私、ひとこと言いたいことがあるの。最近のあなた、どうしちゃったの?」って。「あなた、このままドブに落ちていくつもり?」と。こんなセリフを言われたんですよ。

―――なかなか厳しい言葉ですね。
 「これ以上、私たちのことをがっかりさせないでちょうだい!」と言われたんです。その時はさすがに目が覚めました。厳しい言葉でしたが、とてもありがたくて、でもちょっとショックで、会社に戻って「いま○○さんに呼び出されて、こんなこと言われました」と上司に言ったら、上司がすごくおおらかな人で「ようやく気付いた?」って笑ったんですよ。「我慢していたんだな、上司も」って思って。ところが上司は「今年の昇進試験を頑張ってみる?」って言ったんですよ。

―――きつい言葉を浴びせられたタイミングで?
 まさにそのタイミングで。すぐに「頑張ります」って返事をしました。そうすると今度は準備の仕方が違うんですよ。「私を見て、私を評価して」だった私が、ほかの社員に対して「私は何ができるか」という視点でモノを考えるようになったんですね。そうすると「チームをこうしていきたい」「この組織をこうしたい」「私は組織の一員としてこういう役割を担いたい」と。全然姿勢が違うんです。おかげさまで昇進試験には合格しました。いままで過去の自分の業績だけを語っていた私が、未来の可能性と希望を語るようになったんです。

「あなたにはスキルはないけど、変えたいことあるよね?」と打診された社長就任

―――2020年1月に社長に就任されましたね。
 青天の霹靂でしたね。「まさか私が?」と思いました。事業部を任されていたんですが、業績が厳しかったので責任を取らされるんだろうなと思っていました。呼び出されて社長に「業績が厳しくてすみません」と言ったら、「来年から君を社長にと思っているんだよ」と言われました。「あなたにはそんなにスキルがあるわけではないけど、変えたいことがあるよね?」と言われたんです。弊社はいい商品を作っていますし、販売現場でもすごく努力をしている人が多い。弊社の価値をもっと高めて、お客さまにもっと良い経験をしていただきたい。そのためには我々自身、まだまだ努力することがいっぱいあるよねと思っていたのは事実なんです。

―――社長になった2020年1月は、そこからすぐ新型コロナですよね?
 そうですね。忙しすぎてほぼ記憶がありません。何をやっていたんだろうという感じです。ポーラのビジネスの仕方は、町に店があって、エステをして、そこから商品を買っていただく対面・接触の仕事がメインですよね。だから相当厳しかったです。対面・接触型からのビジネスの転換といいますか、オンラインへの切り替えだとか、とにかく必死にみんなで一歩前に進む、とにかく前を向くということをやってきた感じです。