■「スリム」「綺麗好き」「かしこい」 それでもブタは“悪口”か
本来の姿はどうであれ、「ブタ」はどうしても「悪口」に聞こえてしまう。言語の働きや仕組みを考える言語哲学のスペシャリストで、南山大学人文学部准教授の和泉悠先生になぜなのか聞いた。
ーースリムで、きれい好きで、賢いブタをどうしてこんなにネガティブに捉えてしまうんでしょうか?
南山大学人文学部人類文化学科 和泉悠先生
「序列で考えたときの「ブタ」の位置、そして伝統的に積み重ねられてきた「ブタ」のイメージが、嫌な気持ちにつながっているわけです」
ーー序列で考えるブタ、ですか?えーと、よくわからないです・・・。
南山大学人文学部人類文化学科 和泉悠先生
「そもそも悪口には、基本的に優劣関係、序列のようなものを表現して、誰かを自分より下だというような“比較”が必ず含まれます。自分よりランクが下だと言うために悪口を言うと考えられるわけです。
人間の感覚では、人間が一番上で、その下に人間に近いオランウータン・・・というように動物や植物を潜在的に序列で見ていて、ブタの位置は人間よりかなり下と捉えているのです。なので、序列がかなり下の動物みたいと言われると、否定的な受け止めになるわけです」
ーーうーん、確かに「オランウータンみたい」と言われるより「ブタみたい」と言われる方がより嫌な気がしますね・・・。では、積み重ねられたブタのイメージとは?
南山大学人文学部人類文化学科 和泉悠先生
「ブタにもいろんな側面があり、私たちは自分たちが勝手に注目したところを切り取っているわけです。豚がガツガツ食べているところや、お腹がぷっくりしているところなどに着目して、豚は太っている、豚はガツガツ食べるというふうにすり込まれていて、それが消えない。伝統的に積み重ねられたイメージというのが大きいと思います」
なるほど。いずれにしても人間の側の受け止めの問題ということか。しかし、実際はブタはスリムで、きれい好きで、賢いのだ。ブタがどう見えるか…私たちの物事の本質を見る力が試されているのかもしれない。
参考文献:
東京大学出版会「ブタの動物学」
ちくま新書「悪い言語哲学入門」

















