広島市のループ橋で、ダンプカーと乗用車が衝突した事故で、3人を死傷させた罪に問われているダンプの運転手(59)の裁判が8日、広島地裁で開かれました。検察側は、禁錮5年を求刑しました。
起訴状によりますと、男は去年11月、広島市安佐南区でブレーキなどを的確に操作せず、ダンプカーを横滑りさせながら、対向車線の乗用車に衝突。乗用車はループ橋から転落し、夫婦を死亡させたほか、同乗していた娘に大けがをさせたとされています。
娘はリハビリを続け、歩けるまでに回復しましたが、難聴や発声がしにくいといった後遺症の影響で、現在も1人で生活することが困難な状況です。
これまでの裁判で、検察側は、男が事故後に受診した病院が作成したカルテなど証拠として提出。そのカルテによりますと、「男に てんかんや低血糖など、意識消失を伴う症状は認められない」としています。
一方、弁護側は、男が書いた「謝罪文」を提出しました。謝罪文には「尊い命を自分が奪ってしまった。なんてことをしてしまったのだろうと、自責の念に駆られています」などと記されていました。
8日の論告で検察側は、当時の状況について「男に体調不良はなかった」「フットブレーキも踏まず、ギアもニュートラルであった」「ダンプカーが減速せずに、パニック状態に陥った」などと指摘。「無線に気を取られて注意義務を怠っていて、過失の程度は悪質かつ重大」として禁錮5年を求刑しました。
一方、弁護側は「職業運転手の男が、速度が落ちていないのに減速しようとしていないのは不自然。事故直前に陥った一時的な体調不良による事故の可能性が否定できず、単純な過失とはいえない」として無罪を主張しました。
「最後に言いたいことはありますか?」と裁判官から問われると、男は「申し訳ないという思いでいっぱい。ただ、飛ばしていたわけではなく、速度を落とそうとした段階でこうなってしまったことは伝えたい」と話していました。
判決は29日に言い渡されます。