休み中に「決断するエネルギー」を充電→退職という決断に…
早稲田メンタルクリニックの院長・益田裕介さんは「GW明けなど、長期休暇明けに退職が増える理由」をこう分析する。
早稲田メンタルクリニック 院長 益田裕介さん
「休みの間に『決断するエネルギー』が貯まるからです」
体力が回復すればするほど、何かを決めるために必要なエネルギーが貯まっていく。そのため、休み明けは大きな決断がしやすくなるという。
では、なぜ「退職」という決断をするのか。
早稲田メンタルクリニック 院長 益田裕介さん
「パーソナリティ機能が低く、かつ、回避的な人は退職しやすい傾向にあります」
「パーソナリティ機能」とは、精神科などで用いられる言葉。自己の認識や評価などの「自己機能」と、他者に関する共感性などの「対人機能」の2つから成り立っている。
また、パーソナリティ機能は、生まれながらの要素と後天的な要素のハイブリッドで決まる。後天的な要素とは記憶や経験のことで、知識を蓄えることで、高めることができるという。
例えば「なぜあの人はこんなことを言ったのか?」と疑問に思っていたことも、知識を増やすことで「こういう事情があったのか」と自分で理解することができる。また、他者だけでなく、「自分はこういう人間なんだ」と自分への理解も深まっていく。
こうして自己機能および対人機能が高まっていくと、自然とパーソナリティ機能も高くなるという。
早稲田メンタルクリニック 院長 益田裕介さん
「新卒の人は若い。若いと成長しきっておらず、知識が少ないため、パーソナリティ機能が低いことが多いです」

なおかつ、パーソナリティ機能には「否定的、回避的、反社会性、衝動性、精神病性」という5つの特性がある。
その中の「回避的」は、話しかけられても黙ってしまったり、そもそも人と交流を持とうとしなかったりするといった行動をとりがちな特性を指す。そういった人は、引きこもりになったり不登校になったりしやすく、「退職」という決断もしやすいのだそう。
その上で、退職代行を使うのは、より回避的な特性が強いと考えられるという。

早稲田メンタルクリニック 院長 益田裕介さん
「『退職』を決断する前に、家族や上司、病院の先生など、信頼できる人との『相談』を決断した方がいいですね」
前述した退職代行の利用経験者の上原さんは、自分自身は後悔していないが、「あっという間のやり取りで退職できてしまうので、迷っている中で利用すると後悔するかもしれません」と話していた。
手軽だからこそ1度しっかりと考えてみてほしい。仕事を続ける、退職をする、直接伝える、代行を使う、どれを決断するにしても、後悔のない選択を…。
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<取材協力>
益田裕介(ますだ ゆうすけ)
早稲田メンタルクリニック 院長
精神保健指定医、精神科専門医・指導医
防衛医大卒。防衛医大病院、自衛隊中央病院、自衛隊仙台病院(復職センター兼務)、埼玉県立精神神経医療センター、薫風会山田病院などを経て、早稲田メンタルクリニックを開業。
著書に『精神科医の本音』(SBクリエイティブ)、『精神科医がやっている聞き方・話し方』(フォレスト出版)がある。