◇《民間主体の宇宙ビジネス…秘密のベールに包まれた開発現場》

 宇宙開発に関わるビジネスの中心は、いまや民間企業である。全体の4分の3を占めているという。2040年、世界の市場規模は140兆円に膨らむというが、高い安全性とコストダウンが、大きな課題となっている。

開発中の人工衛星用「超高性能エンジン」


Letara(レタラ)が参入を目指すのは、人工衛星用のエンジンである。爆発の危険がないポリエチレン由来の燃料を使った、超高性能のエンジンを開発中だ。

Letara(レタラ)深田真衣さん
「白い固形のモノが燃料になっていて、この燃料をエンジンの真ん中の空間に入れて燃焼させる」


Letara(レタラ)は、札幌に設計部門などを置き、滝川市江部乙にある廃校になった中学校の校舎跡で、エンジンの組み立てや実験を日々重ねている。カメラ取材を進めていると、コンテナの前で、カメラ撮影を止められた。

Letara(レタラ)糸魚川大和さん
「撮影は、ここまでです。申し訳ないですけど。かなり最先端のものなので」

実験施設近くでカメラ撮影を止められる

藤田忠士記者
「このコンテナの中に小型化したエンジンが…?」

鉄製のコンテナ内部には、実験機が設置されているが、高度な機密情報が詰まっているため、接近も撮影も一切NGである。まもなく燃焼実験が始まろうとしていた。

だが、許されたのは、離れた場所から眺めることだけだった。それでも取材記者は、宇宙ビジネスのカギとなる一端を、どうしても知りたかった。

ブラインド越しに実験施設を覗く藤田忠士記者

◇《人工衛星用の超高性能エンジン…燃焼時間が4倍にアップ》

交渉の末、撮影範囲を炎の噴き出し口に限ることで、固定カメラの設置が許可された。いよいよカウントダウンが始まった。

燃焼実験のカウントダウン「10・9・8・7…」

カウントダウンが終わると同時に、超高性能エンジンの噴射口からオレンジの炎が、勢いよく吐き出された。

Letaraが開発中の高性能エンジンの最新実験機(北海道滝川市)

何度となく重ねられた燃焼実験だが、最新のタイプの実験機では5秒が最長記録だった。今回はどこまで続くのか。そして炎が噴出口から消えたのは、20秒後だった。

Letara(レタラ)糸魚川大和さん「よーし。大成功です」

若きエンジニアたちから歓喜の声と、力強い拍手が起きた。最新タイプの実験機では、燃焼で高温になるエンジンを冷ます改良を加えた。その結果、燃焼時間は、これまでの4倍にまで伸びることとなった。

新タイプ実験機による燃焼時間20秒は最長(北海道滝川市)

Letara(レタラ)糸魚川大和さん
「燃焼実験で20秒をクリアできたというのは将来、お客さんに売っていく時に大きなマイルストーン(到達点)になった」