なぜPodcastが成功したのか?
興味深いのは、Vox MediaのPodcast事業が、最初から大きな戦略にもとづいて立ち上げられたわけではないという点です。
きっかけは、名物記者や編集者が自身のライフワークとしてPodcastを始めたことでした。オーディエンスや読者と熱心に交流できる場として行われていたものが予想外に伸び、「これはビジネスになるのではないか」という流れになったようです。
当初は個人の熱意に頼る部分が大きかったものの、会社としてその可能性に着目。データを収集し、市場や業界をより深く理解していくなかでPodcastの有望性を確信し、本格的な事業展開へと舵を切りました。
では、Vox MediaのPodcast事業成功の鍵は何だったのでしょうか?関係者のインタビューによれば、それは「ホストに何もかも全てをやってもらわないこと」だと言います。
記者個人がPodcastを始めると、企画、リサーチ、ゲストのブッキング、収録、場合によっては編集まで、全てを1人で抱え込んでしまう状態になりがちです。Vox Mediaの初期も、編集は制作会社が入っていたようですが、企画立案や出演、ゲストブッキングは記者が行っていました。
しかし、Vox Mediaはこのやり方は望ましくないと考えました。ホストには、出演や自分なりの視点を考える仕事に集中してもらう。そして、リサーチャーやディレクターといった優秀な制作スタッフを番組ごとにつけ、チームでコンテンツを作り上げる体制を構築したのです。
個人の熱意から始まった活動を、会社が後からサポートし、投資を行い、専門的な制作体制を整えることで、多くのヒット番組を生み出し、事業として成長させることに成功したのです。