奄美大島と徳之島だけに生息し、絶滅危惧種に指定されているアマミノクロウサギ。車にひかれる事故が後を絶たない中、けがをしたウサギを治療して飼育する施設が奄美大島にできました。島には、アマミノクロウサギとの長く深いつながりがありました。
奄美大島・大和村にオープンしたアマミノクロウサギの研究・飼育施設「QuruGuru」。「くるぐる」とは、奄美の方言で「黒々とした」という意味で、ウサギの体の色にちなんでいます。総事業費8億2700万円をかけて村が整備しました。
観光客の目を引いていたのは、夜の森を再現した飼育場です。夜行性のため、普段はナイトツアーなどでしか見られませんが、ここでは、活発に動き回る姿を昼間でも観察できます。
(神奈川から)「本当に真っ暗な部屋で探せなかったけど、運が良く一番前に来てくれて、小さい娘も見られました」「かわいかった」
(東京から)「耳がとても短くて特徴があるなと」
一方で、アマミノクロウサギは今、車にひかれる「ロードキル」が問題となっています。奄美大島で車にひかれて死んだウサギは、おととし過去最多の147匹、去年は121匹と、3年連続で100匹を超えています。
施設では今、オス2匹が飼育され、いずれもけがなどで野生に戻すことが難しいウサギです。最大で20匹まで受け入れることができ、治療やリハビリをしながら生態の研究も行われます。
保護や研究の拠点となった大和村。アマミノクロウサギとのつながりは、62年前にさかのぼります。
(記者)「大和小中学校のこちらの場所で、かつてアマミノクロウサギが飼われていました」
1963年。アマミノクロウサギは国の特別天然記念物に指定され、学校では国の許可を得て飼育を始めました。詳しい生態が分からなかった中、27年間、子どもたちが毎日観察。飼育下で初めて繁殖に成功しました。
大和村はいわば、アマミノクロウサギ研究の出発点となりました。当時を知る卒業生は…
(卒業生・中村修さん)「小学生も中学生も全児童・生徒にウサギのエサ当番が回ってくる。サツマイモのつるが畑で常時とれたので、(エサとして)良かった気がする」
1991年に絶滅危惧種に指定され、目にする機会も少なくなりましたが、丸々としたその姿は心を癒してくれます。
(卒業生・中村修さん)「山の中でナイトツアーで見ても、光や人間を感知したらあわてて逃げていく。逃げる後ろ姿しか見られないけれど、この(新施設の)マジックミラーで見るウサギは、いつものんびりしてくつろいでいる」
愛らしい姿をいつまでも。アマミノクロウサギを守る取り組みは、新たな一歩を踏み出しました。