長崎大学で半世紀にわたって続いたサークルがその歴史に幕を下ろそうとしています。長崎大学の落語研究会。現在、部員は4年生1人だけです。

6月の寄席を最後に廃部となってしまう可能性もある中、1人で活動を続けてきた現在の会長にいまの思いを聞きました。

新入生を迎えた春。長崎大学の各サークルは新入部員を獲得しようと必死のアピールを続けていますが…。

長崎大学落語研究会会長・馬渡遥さん「喉から手が出るぐらい後輩は欲しいですからね」

Q:いま部員って何人ですか?「えーっと、私だけです」

Q:おひとり?「はい」

長崎大学落語研究会の会長で環境科学部4年の馬渡遥さん。芸名「麗し亭千春」さんです。両親の影響で9歳から落語を始め、幼少期から憧れていた長大の落研に入りました。

馬渡さん「やっぱり1人で全部覚えて、演じて、会場を自分がコントロールしているっていうそういうのがやってて面白いんですよ」

創設52年目の長大落研部員は、現在4年生の馬渡さん1人だけです。そして馬渡さんも6月の寄席をもって引退します。

長大の落研は1973年に8人でスタート。OB、OGはおよそ200人に上り、プロの落語家になった卒業生もいます。

長大落研第38代・三遊亭らっ好さん「僕らの世代すごく人数多かったんで、もう本当めちゃくちゃでしたよ。朝からやって夜に終わる寄席」

しかし、2020年以降のコロナ禍で寄席を開くことも、部員で集まって稽古をすることもできなくなり部員は急激に減少。馬渡さんは3年間1人で落研の活動を続けてきました。

馬渡さん「1人でも頑張れたっていうのがやっぱり落語の楽しさをもっと人々に伝えたかったっていうのがあって、それができるっていうのがまさしくその後輩に落語を教えてる瞬間だなっていうのが思ってて。結局それが叶わず」

200人の部員が過ごしてきた部室には、多くの思い出と歴史の詰まった品がいまも残っています。

馬渡さん「これ第1回目のチラシですね。昭和48年12月の14日ですね。第2回第3みたいな感じで続いてって」「落研の多分日誌ですかね。何とか4年生になりましたってあるけど今の私じゃない…何かOBと話しているような感じになりますね」

落研をなんとか存続させたいという想いと「廃部は仕方ない」という諦めの気持ちがいま複雑に入り交ざっています。

馬渡さん「やはり思えば4年間全部落研ばっかだなって思って。本当に、『落研は私』だ。終わらせたくはないです」

新入生に落語の楽しさをアピールできる最後のチャンスは6月に開かれる馬渡さんの引退寄席です。

2か月後の本番に向けて。大学時代落研に所属し今もアマチュアで落語を続けている母・奈々さんに指導してもらいながら、自宅で稽古に励んでいます。

馬渡さん「パートナーですね。一緒に寄席本番まで走り抜けてくれるようなパートナーです」

母・奈々さん「せっかく落研に入ったのに、同期もいなければ後輩もいないという状況っていうのがやっぱりとっても私からするとかわいそうで、アマチュア落語の先輩として、全力でサポートして、最高の話に仕上げていきたいなと思っております」

馬渡さん「誰かの記憶に残るような一席ができたらなって思います」

三遊亭らっ好さん「千春ちゃん(馬渡さん)の原動力が落語をやることが楽しいってことですから、頑張ってくれー!と思っていましたけどね。(新入部員が現れるかもしれない)望みにかけてね。ちょっと今から稽古しなきゃですね」

落研に青春を捧げた現役生とOBが一丸となって6月に開かれる引退寄席に向け、稽古を続けています。

馬渡さん「ここで落研が終わるかもしれないんですけど、諦めずに何かをやっていたら必ず誰かに印象は誰かの記憶には残ってくれるってことを伝えたいなって。何より落語って楽しいものなんだっていうことを。やってて面白いんですよ、だから、それを伝えたいなと」

有終の美となるのか、はたまた長大落研の新たなスタートとなるのか。多くの人の心へ落語の魅力、届けます!