“トランプ関税”の突然の方針転換について、発動からわずか13時間あまり、トランプ氏は“相互関税”の「90日間の一時停止」を表明しました。ただ、米中の貿易戦争がこのままエスカレートした場合、iPhone1台の値段が50万円になるかもしれないとの指摘も出ています。

「相互関税」一時停止は“想定外”か

小川彩佳キャスター:
発動からわずか半日余りというスパンで、一時停止を表明した関税ですが、トランプ氏にとってこれはシナリオ通りの動きなのか、それとも想定外の決断なのでしょうか?

ワシントン支局 涌井文晶記者:
トランプ氏や周辺は常にどういうことが起こっても「シナリオ通りだ」「うまくいっている」と発言し、トランプ氏本人から「シナリオから外れている」という言葉は絶対に出てこないんです。ですが今回ばかりは、本音では想定外だったのではないかと思います。

トランプ氏にとって、株式市場が下落するというのは想定の範囲内だったと思いますが、相互関税の発動後に、アメリカ国債が激しく売り込まれて金利が急騰するという動きがありました。また、為替市場ではドルが売り込まれるということで、株安・通貨安・債券安と3つ揃ったトリプル安に。

これは大きな金融危機に繋がる可能性があることを示す危険な状況です。1987年のブラックマンデーの直前にもこのような値動きがあり、さすがにまずいということで、側近のベッセント財務長官などが「修正に動くべきだ」と進言したと伝えられています。

小川キャスター:
90日間という期間は、何か根拠があるのでしょうか?

ワシントン支局 涌井記者:
本人は直感で決めたと言っていて根拠はそれほど説明していないんですが、政権の幹部はこの期間に交渉するのだと説明しています。つまり交渉期間が90日間になると思われます。

今は、政権が説明してるだけでも75か国が交渉を希望しているということです。日本はその先頭にいるという説明もされていますが、90日間で75か国との交渉がうまく進むのか、そもそもそんなに対応できるのかと心配になっています。

藤森祥平キャスター:
同じようにアメリカ国民も振り回されていると思いますが、国内の受け止めはどんな印象ですか?

ワシントン支局 涌井記者:
日本の醤油農家の方が「毎日が青天の霹靂」と言っていましたが、アメリカのビジネス関係者も似たような受け止めをしています。テレビでは中小の事業者が関税の影響を受けるのが心配だと話しています。

関税が上がることがはっきりすれば、それに合わせてビジネスの計画を決めるという対応の仕方もありますが、1日1日でどんどん変わってしまう中で、どうしたものかわからないというような声も聞かれます。

また、今回の選挙でトランプ大統領を支持、投票した人の中でも、中国への輸出が非常に多いという業種である大豆農家の人は、「トランプ大統領を変わらず支持はしているが、関税政策は見直してほしい」という声をテレビのインタビューなどで言っていました。

私自身も去年、大豆農家をアイオワ州で取材しましたが、その時も関税が激化するということについて非常に警戒していると話していました。

日本総研主席研究員 藻谷浩介さん:
トランプさん本人はフレキシブルだと言っていましたが、まさにタコのようにふにゃふにゃですので、いちいちそこに反応してすぐ対策を打てと騒ぐのはやめた方がいいのではないでしょうか。つまりそれに騒いで慌ててる人を、逆にカモにして、強気に交渉してくるということです。

日本自体が別に困るわけでもないんです。日本は去年の経常収支が29兆円で史上最高ですし、貿易赤字が15兆円から5兆円まで、10兆円くらい年間で縮小しています。そのため、まだリザーバーはありますので、そんなにパニックをせずに90日をゆっくり見た方がいいと思います。

醤油農家のように、小さい会社だけど一生懸命輸出する方は、思い切って量が減る分、値上げをして、より大きく関税以上に値上げをして売り上げを確保するトライをしてみてはいかがでしょうか。

藤森キャスター:
売れる確証はありますか?

日本総研主席研究員 藻谷さん:
元々値下げしないと売れないというのは日本のガラパゴスの考えで、200円、300円はアメリカから見たら非常に安いです。

日本総研主席研究員 藻谷さん:
きちんと高い値段を払う人を探す大きなチャンスだと、醤油や日本酒の場合は思います。

小川キャスター:
これだけスパンが変わる中で、なかなか難しいところでもあると思いますが…

日本総研主席研究員 藻谷さん:
iPhoneが本当に50万円に上がっていくのであれば、醤油の値段が上がっても誰も驚きません。