福島県浪江町の中心部を流れる請戸川。請戸川リバーラインと呼ばれる川沿いには、約120本のサクラ並木が続いていて、現在ほぼ満開となっています。

浪江町では、4月4日、原発事故後、中止となっていた春の風物詩「さくら祭り」が15年ぶりに開かれました。一時は、全町避難となった故郷でサクラを守り続け、祭りを再開させた男性を追いました。

4日、浪江町に春の風物詩が戻ってきました。請戸川リバーラインで行われた「さくら祭り」。震災・原発事故後、15年ぶりの開催となりました。

浪江町民「自分の子どもと地元で花火を一緒に見られたというのが嬉しい」

「請戸川リバーライン」と呼ばれる川沿いの遊歩道は、春になると、約1.5キロにわたり、120本のソメイヨシノが咲き誇る町を代表するサクラの名所です。町に暮らす小黒敬三さんは、30年近く前からボランティアで手入れを行ってきました。

小黒さん「自分だけの楽しみじゃなくて、花が咲くとみんなが集まってきて、みんなが楽しんでいる。やっぱり自分だけの楽しみよりみんなが楽しんだ方が楽しさが倍になる。それがあるからやっていられる」

毎年4月上旬に行われる「さくら祭り」。地元の人たちでにぎわい、浪江の春を彩ってきました。しかし、原発事故で町は、一時、全町避難に。2017年に一部地域で避難指示が解除されますが、町に戻る人は少なく、祭りは中止を余儀なくされました。

小黒さん「みんなサクラが気になってしょうがないんだよね。自分の生活もままならないんだけど、なんかやっぱりサクラが気になって」

小黒さんは、震災の2年後から避難先から通い、仲間たちと故郷のサクラを守り続けてきました。

15年ぶりの祭り復活へ。実行委員会では、3年前から準備を進め、祭りを4日後に控えたこの日、最後の会議が行われました。実行委員会は、町の商工会や有志などからなり、小黒さんは、副委員長として祭りを取り仕切ります。

Q.メンバー集めるのは大変でしたか?
小黒さん「意外とさっと。みんなも楽しみというか、そういうのを期待していたのかな」

迎えた本番当日。あいにくサクラは満開とはなりませんでしたが、それでも実行委員会のメンバーは、15年ぶりの祭りに心を弾ませます。昼ごろになると、会場には、地元の人たちが続々とが集まってきます。一時は途切れた故郷の春の光景を懐かしんでいました。

浪江町民「何があってもこれ(サクラ)を見ると頑張ろうって気持ちになる」
浪江町民「14年間お祭りはなかったけれど、町の有志の方が毎年こうやって桜の木に手入れをしてくださっているんだなというのが分かるからすっごく嬉しかったです」

そして午後7時。祭りの盛り上がりは最高潮に。浪江町の夜空に大輪の花が浮かびました。この日集まったのは、約1000人。夜桜と花火の競演に、訪れた人の表情も笑顔になります。

子ども「きれいだった!赤とかきれいなパラパラってなっていたところが一番好きだった。サクラの下で見たのが楽しかった」
父「一時は誰一人残らず避難したこの地にまた家族で来られたというのは非常に感慨深いというか、当時は想像できなかったけれど、また町民の方が集まってこうやって一緒に昔からのお祭りができたというのは非常に嬉しく思います」

小黒さん「いっぱい来てくれて、それは予想以上で良かったです。また来年もやるぞというやる気がまたわいてきた」

15年ぶりに開催されたさくら祭り。これからも請戸川のサクラとともに浪江町の人たちの心をつないでいきます。