総務大臣も苦言:メディアの責任と国際関係への影響
このコーナーでも紹介したことがあるが、日本と中国それぞれで、「相手の国をどう思うか?」という世論調査を実施すると、日中どちらでも9割近い人が「相手国に対してよくない印象」を持っている状況が明らかになっている。今の中国側にも問題はあるが、日本国内にも、問題はないだろうか。その一つの例が、取り上げた「ステレオタイプの中国話」ではないか。
日本に住む中国人は多い。『月曜から夜ふかし』を観ている中国人も多いだろう。そのためか、中国人女性が「中国ではカラスを食べる」と発言したかのようにねつ造していた場面を観て、中国人の使うSNSで指摘され、中国でも火が付いたという。
放送行政を管轄する、総務省の村上誠一郎大臣は記者会見で、日テレの番組に触れ、このように苦言を呈した。
日本テレビは正確な情報発信を行い、国民の知る権利を満たすという放送事業者の社会的役割を自覚して、適切に対応していただきたい。
総務大臣の言葉は、誤った情報への苦言とともに、中国との2国間関係を損なわないようにとの思いもあるのだろう。偏った認識に基づいて、隣国を茶化しても、ましてや、ねつ造した情報を、電波を使って流しても、メディアは自らの首を絞めるだけだ。何より、自らを貶めるだけでしかない。
◎飯田和郎(いいだ・かずお)

1960年生まれ。毎日新聞社で記者生活をスタートし佐賀、福岡両県での勤務を経て外信部へ。北京に計2回7年間、台北に3年間、特派員として駐在した。RKB毎日放送移籍後は報道局長、解説委員長などを歴任した。