2025年1月の図上訓練

今年1月、外国からの武力攻撃が予測される「武力攻撃予測事態」を想定して先島諸島の住民らを避難させる図上訓練が沖縄県庁で実施され、先島諸島の5市町村や避難先として想定される九州各県の担当者、航空会社など合わせて約400人が参加しました。

訓練は「X年■月、我が国周辺の情勢悪化。あらゆる外交努力を尽くすも関係は改善されず」として「関係機関等連絡調整会議」を開くという想定で行われました。

沖縄県国民保護共同図上訓練資料より

「武力攻撃予測事態」の認定について、危機管理学を専門とする日本大学危機管理学部の中林啓修准教授は「難しい判断を迫られる」と指摘します。

日本大学危機管理学部 中林啓修 准教授

▼日本大学危機管理学部 中林啓修 准教授「“武力攻撃予測事態”とは何かというと、まだ武力攻撃には至っていないけれども、事態が緊迫して武力攻撃に至る可能性が高まってきたというものを“武力攻撃予測事態”といいます。明確に例えばこの線まで外国の軍隊が来たらとか、そういうものがあるわけではなく、本当にその時々の状況で判断しなきゃいけないものなんです。だからこそすごく難しさがあって、うかつな認定をしてしまえばこっちにその気がなくても、相手からは日本が挑発をしてきたととられる可能性がある。他方、躊躇して認定しないことによって、急速に事態が進んでしまうようなことがあれば、住民を避難させるタイミングが失われて、結果的に多くの住民の命を失うことにもなりかねない。適切な時期に適切な説明をしながら、まさに国際社会の理解を得ながら、避難を行うために適切な事態認定をしていく、ここも難しさがあります」

事態認定の判断は、だれがどのようにして行うのでしょうか?

▼日本大学危機管理学部 中林啓修 准教授「事態認定するにあたって“対処基本方針”という文書を作ることになっていて、この基本方針の中で事態認定をすることに至った理由や、具体的にどんなことをするのか、要避難地域はどこで、その人たちを避難させる避難先地域はどこなのかも、そのとき合わせて示すことになるんです。この対処基本方針を“閣議決定”する。少なくともそこまでやって事態認定なので」

また、事態の認定には閣議決定に加えて国会の承認が必要になるといいます。

▼日本大学危機管理学部 中林啓修 准教授「本当は国会承認が必要で、緊急で余裕がない場合は閣議決定をするんですが、事後的に国会での承認を受けなければいけない。万が一、国会承認を受けられなければそこで“効力は停止”です」