今年3月、政府は台湾有事などを念頭に沖縄県の先島地域の住民など約12万人を避難させる計画を初めて公表しました。

先島諸島の5市町村(宮古島市、石垣市、竹富町、与那国町、多良間村)の住民や観光客など合わせて約12万人を6日程度で九州各県と山口県に避難させる計画で、民間の航空機やフェリーに加えて自衛隊や海上保安庁の船舶などを使用し、1日で約2万人の輸送力を確保するとしています。

各市町村の避難先(内閣官房公表資料より)

5市町村の住民は地域コミュニティの維持を目的に地区や校区ごとに同じ自治体に避難する想定となっています。また、避難後に生活をするホテルや旅館についても、可能な限り同じコミュニティが近隣の宿泊施設で受け入れられるよう、受け入れ先の各県で検討が続いています。

そして、各自治体からの具体的な避難の方法については、先島の5市町村が計画を作成していて、去年9月には石垣市で住民避難の手順を確かめる「実地確認」が行われるなど、各地で検討が進められています。

石垣市で行われた住民避難の「実地確認」(2024年9月)



▼中山義隆 石垣市長「もちろん武力攻撃予測事態とならないこと、またこの住民避難計画が実行されることがないことが私たちが真に求めていることでございます」

中山義隆 石垣市長(2024年8月の住民との意見交換会にて)

去年8月、石垣市で開かれた住民との意見交換会。市が作成した避難計画案に対して、住民からは障がい者への配慮や避難生活への不安などを訴える声があがり、市は「万が一への備え」だとくり返し理解を求めました。

▼石垣市・新川在住「私はろうあ者です。情報保障の説明がなかったので、障がいのある方もたくさん意見があると思うので、意見交換を障がい者団体などとくり返ししていただけるとありがたい」

▼石垣市・大浜在住「住み慣れた石垣市で一生を終わりたいなと思うんですけど、こんなことはできませんか?」

▼中山義隆 石垣市長「その方を守るため、もしくはその方を支援するためにまた市の職員も残らないといけない。考え方として全員避難していただくというのが大原則でございます。そこはご理解いただきたいと思います」

▼石垣市・登野城在住「戦争を想定した避難計画を立てていること自体がこんなことあってはならないなと思って。やっぱり市長も言ったように、そうならないようにどうするかということにもっとエネルギーを使ってほしい」

このほか、与那国町では一昨年9月・10月に住民との意見交換会が開かれました。避難を希望するかどうかのアンケートでは、「希望する」が45%、「希望しない」が47%、「わからない」が8%となりました。

与那国島外避難に係わる意見交換会アンケート(参加者:85名、回答数:73)

避難をせず与那国島に残ることを希望する住民からは、このような質問・意見があがりました。

【与那国町民からの意見・質問】
▼島に残りたい人の権利は?
▼避難に法的な義務はあるのか?
▼強制でなければ残ってもいいのでは?
▼与那国を守る前提で自衛隊を入れたのに、何故、避難しないといけないのか?
▼私は、避難しません。なぜ、島を出ないといけないのか?国と国の争いだから、ここだけではないと思う。
▼私は、島に残りたい。自然災害など、孤立しても自力で生き延びられる、発電・蓄電を各家庭で、電柱の地中化等、避難しないでいいような島にしてほしい。災害面をトータルで考えてほしい。
▼私は、絶対に行かない。戦争するために前提としてなのか、日本は戦争できる国なのか、シェルターを作るのはどうか、難儀せずに避難しないでいい方向を探
してほしい。

これに対して、与那国町はこのように回答しています。

【与那国町の回答】
 国民保護法では、避難住民や被災者の救援に際して、食品、衣料品等の物資の確保や収容施設等として、必要な土地、家屋等の確保及び医療関係者による医療の実施の確保に係る規定があります。
 国民保護法ではこれらの措置を実施するに当たっては、関係者の自主性を尊重し、強制的な権限は用いずに、まず前もって要請等により対応を求めることとしています。また、国民保護における避難指示については、法的な義務は生じますが、強制的に避難させることはありません。この避難の要領は全島民の島外避難の指示が出された場合のものであるため、ご理解を頂き避難してもらう努力をすることになる。
 国民保護法においては、「国民の保護のための措置を実施するに当たっては、日本国憲法の保障する国民の自由と権利が尊重されなければならない」(第 5 条第 1項)、「国民の自由と権利に制限が加えられるときであっても、その制限は当該国民の保護のための措置を実施するため必要最小限のものに限られ、かつ、公正かつ適正な手段の下に行われるものとし、いやしくも国民を差別的に取り扱い、並びに思想および良心の自由並びに表現の自由を侵すものであってはならない」(第 5 条第 2項)とされています。この原則に基づいて、国民の権利および義務に関する措置については、限定的に規定されています。

与那国町は「避難は強制ではない」としつつ、「理解を頂き避難してもらう努力をする」としています。住民の間でも意見が分かれ、様々な声が聞かれる避難計画ですが、そもそも、どのような状況になった場合に、避難をすることになるのでしょうか。