イチロー氏の金言を要所に掲示「教えは色褪せない」

五日市さん:「本当の優しさ」という言葉が印象的でした。以前は選手同士で厳しく接することができず、「どんまい」などの優しさで済ませてしまっていましたが、イチローさんが「本当の優しさは、信頼しているからこそ厳しい言葉をかけることだ」と言ってくださり、選手同士でも、しっかりと厳しく言えるようになりました。

また、「1日は大したことないけど、積み重ねが大きな差になる」というイチローさんの言葉は、普段意識していなかった部分でもありました。時間が経つと、指導を受けた日のことを忘れがちですが、チームで撮った動画を見て、その時の雰囲気や教えを再確認しています。目標を再設定したり、イチローさんの短いメッセージを部室などに掲げて毎日練習するなどしているので、イチローさんの教えは色褪せていないです。

トレーニング室の貼り紙

2年間、選手とは違う視点でチームをサポートし続けてきた五日市さん。高校ラストイヤーに懸ける思いも教えてくれた。

五日市さん:去年は「甲子園出場」の目標は叶いませんでした。それでも、チームの意識が大きく変わり、今年は技術面でも成長したと感じています。練習の雰囲気が例年と違っており、実戦的なメニューや個別練習が増えたことがその証拠です。選手たちの頑張りを支えつつ、チーム全体が目標に向かって進むように意見を出していきたいと考えています。今年こそはイチローさんに良い報告をしたいです。

Q.将来の夢、目標は
五日市さん:父が市役所で道路の設計などをしており、小さい頃からその仕事に触れてきました。道路の仕組みや設計について学び、地域に貢献できる仕事に興味を持ちました。将来的には土木関係の仕事をしていきたいと思っています。大学は北海道大を目指して勉強しています。

イチロー氏の金言を掲示

選手・マネージャーに刻まれた2日間。のちにイチロー氏はこう振り返った。

イチロー氏:「1日を無駄にしない」と人はよく言います。でも、今日と明日がそんなに違うと思える人はあんまりいないでしょ。でも結果的にはそうですから。1日だって無駄にできないんですよ。明日やろうっていう人間はもうずっとできないケースが多い。その1日って、そんなに大きく変化するとは思えない時間なんだけど、そういう考え方の人って3日目と4日目も変わらない。4日目、5日目も変わらない。そんな変われない。ずっとそうですよね。でも1日が大事と考える人間は、1日目と10日目は9日も差があるから、“大きな差がある”って考えられるんですよ。
旭川東の選手たちは、この1日がいかに大きいかを考えるべきでしょうね。1日目と2日目、全然大きく変わらないんだけど、そうやって捉えると駄目なんですよ。さぼっちゃう。でもその全然差がないような1日を重ねていくと1日目と100日目は違うに決まってるじゃないですか。そういう考え方ができるかどうかは、この過酷な環境のなかで大きいでしょうね。今日と明日は全然違うんですよ。自分も知らない自分が出てくるんです。その感覚を持てたらめっちゃ強いと思います。そのまま、彼らが僕の教えを継続してくれるんじゃないかという期待を持っています。

イチロー氏の指導から1年以上が経ち、“教え”を次の世代へ伝え続ける旭川東。イチロー氏の訪問から高校最後の夏の地方予選までは600日以上。悲願の甲子園へ、積み重ねた1日はとてつもなく大きくなっているに違いない。

横断幕にもイチロー氏の言葉が

■旭川東高校
道内有数の進学校。野球部OBにはプロ野球で初の300勝投手となったビクトル・スタルヒンが在籍していたことでも知られる。さらに23年の世界陸上とパリオリンピック™で金メダルを獲得し、今年9月の東京世界陸上でも連覇がかかる北口榛花の母校。