イチロー氏が割った窓ガラスに「今も見られているような気がする」

バッティングでも旭川東の球児たちに手本を見せたイチロー氏。フリー打撃ではライト側にある校舎の窓ガラスを直撃する打球を放った。飛距離は「49歳より50歳の今の方が伸びている」と語り、選手たちを驚かせたイチロー氏。その時に割れた窓ガラスは記念として校舎に飾られ、今でも中山さんの心に大きく刻まれる出来事になっているという。

割れたガラスは額縁に入れて飾られている

中山選手:ガラスが飾ってある場所には、教室に行くとき毎日通っています。割れたガラスを見るたびにその時のことを思い出しますし、いつでもイチローさんに見られているような気がして…自分の中でスイッチが入ります(笑)

最後に中山さんは、イチロー氏が伝えてくれた“自分に厳しく律する”日々のその先。卒業後のさらなる挑戦の道を、真剣な表情で話してくれた。

Q. 中山さんは、将来どんな進路を考えている?
中山選手:
慶應義塾大学に行って、野球部の学生コーチとして選手を指導したいです。やっぱり自分は第一線にいたいという気持ちが強いです。私もやりたいことをやりつつ、後に続く子のために、少しでも道を作れたらいいなと思っています。ただ、“初の”とか、そういうものに囚われずにやっていきたいです。

Q.将来の夢は?
中山選手:
小学生の頃からプロ野球の球団職員を目指しています。広報や営業ではなく、プレーに関わるような仕事をしたいです。別の形で選手と直接的に関わりたいです。

Q.またイチローさんに会えたら、どんな報告をしたい?
中山選手:
最大の目標である“甲子園で1勝”、その報告をするために、全力で頑張りたいと思っています。

「雰囲気が例年と違う」

五日市詩音さん

マネージャーの五日市詩音(いつかいち しおん)さんは、小学6年の頃、928名の中から選ばれた16人の1人としてファイターズ・ジュニアでプレー。NPB12球団ジュニアトーナメントにもピッチャーとして出場した経歴を持つ。中学の時、肩のケガで選手を引退したが、今度は自分が選手を支える立場になりたいと、マネージャーの道を志した。そんな彼女の質問がイチロー氏を驚かせた。

五日市詩音さん:股関節を上手に使うために日常生活から意識していることはありますか?

イチロー氏:凄い所見ているね(笑)。そんな質問をされたのは初めてだよ。股関節は普段立ってる時から意識しています。運動って、野球やってる時だけなんてそんなのありえないです。そんなときだけやろうとしたって、それは普段と違う動きになるので、それこそ怪我につながると思う。股関節が自然な動きになるためには、日常生活から意識してないと。意識しているものが今度は身について勝手にできるようになる。そうなったらもう意識しないでできるけど。寝てるとき以外は意識しています。酒を飲んでたって意識していますよ。

五日市さん:プレーの時に股関節が大事だって思ったことがきっかけで、姿勢から意識しようと思ったんですか?

イチロー氏:姿勢はね、実は小学生の時に運動会のバトンの女の子がきっかけ。みんな足が揃っててすごく綺麗で。女の子なんだけど。それで、俺の足はどうだって思ったんですよ。その日、学校から帰る時、自分の足を見ながら帰るんだけど、その時に僕、膝が開いてるな、って。それで、真っすぐ進もうって思ったのがきっかけですね。人の姿とかを見て、自分はそうはなれないけど綺麗な歩き方とか姿勢ってどんなものなんだろう、と思ったのがきっかけです。

五日市さん:ありがとうございます!

五日市さんの質問にイチロー氏も驚き

突然の専門的な質問に驚きながらも、“イチ流”の価値観を語ったイチロー氏。五日市さんの当時の心境は―。

五日市さん:小学生の頃から親に股関節の使い方が大事だと聞いていたので、その部分を聞きたいなと思っていました。マネージャーだから質問できるとは思っていなかったので、貴重な経験でした。その後、股関節周りを意識した練習をするようになり、選手同士で話し合ったりして、チーム全体で体の使い方の意識が高まったと思います。