クマが駆除されたことについて、近くに住む人は
「すごく怖かったです。まだ出てこないとも限らないですけど、一応駆除されたということで良かったなとは思う」
「安心は安心したが、もともとはクマが住んでいたところに私たちが来たので、心苦しいなというか、申し訳ないなという気持ちもある」
と話していました。
札幌市によりますと、クマが駆除された場所では、土の中にシカの死骸が埋まっていて、クマはこれに執着していた可能性もあるということです。
クマの生態に詳しい北海道江別市にある酪農学園大学の佐藤喜和(さとうよしかず)教授は、「目撃が続いた地点は住宅街からすぐ近くの緑地。人の生命や財産に対して影響を与えてはいないけど、繰り返し目撃されているし、人を見ても遠ざかる行動が見られず、追い払いも試みたけど行動の改善が見られないということで、やむを得ず捕獲という判断だと思います」と話します。

また「人が目撃しても、ただ撮影や観察をしているだけで、特に追い払いとかクマが怖がるような行動はなかなかできないですよね。そういう中で、クマはどんどん人の前に出ても怖い思いもしないし、人の近くにいっても危険なことがないとどんどん学習して、昼間も出たと思う」と指摘します。
札幌の市街地周辺にクマが出没し、駆除される…。人の行動がクマの出没や人慣れの要因にもなる中、私たち市民はこの事態をどう受け止めたらいいのでしょうか。
佐藤教授は「やっぱりクマは、山の中にいて、クマらしく過ごしているのが理想的な姿であって、人の前で姿を現しながらのんびりするのは困る。そういう認識をこれからは共有していきながら、そういうクマをつくらないためにどうするか、それを考えないと、次は人の側に近づいてきて、最終的には駆除せざるをえなくなる。そういう風につながっていくんだと理解した上で、やっぱり人目につくところに出てこない状況を作っていかなきゃいけない」と話します。
銃による駆除には時間帯や場所に規制がありますが、今回は偶然条件が揃ったためすぐに行うことができました。しかしこれまでは「駆除する」と決めてから数日から数か月、対処できず長期化するケースもありました。クマが出た後にできることは限られるため、事前に考えて対策することが重要です。

今回、クマがこのエリアに移動してきたルートや長く居ついた理由は、まだわかっていません。また今月初めまでは2頭で目撃されていたこともあり、付近にもう1頭いるおそれもあり警戒は続きます。
まだ明らかになっていないことも多く「駆除されてよかった」では終われない状況です。なぜこうなったか、どうしたらいいのか…人とクマが共存していくための模索は続きます。