福島県内で長く愛されている老舗の今を伝える『老舗物語』。

日本古来の伝統的な技術職『左官業』。壁や床などの表面を土やモルタルなどの素材で仕上げる仕事で、日本の建築を支えています。

そんな熟練した技術が必要な左官業を、長年続けている会社が須賀川市にあります。創業67年の『佐藤左官工業所』

--佐藤和良さん(佐藤左官工業所2代目)「我々の若いときは“土壁”。」

--番組スタッフ「壁を塗ったり?」

--佐藤和良さん(佐藤左官工業所2代目)「そう。泥を練って、それに藁(わら)を混ぜて。そしてベタベタ塗って。」

2代目の佐藤和良さん。兄が創業した会社を今は息子であり、3代目の和洋さんと親子2人で守っています。

--佐藤和洋さん(佐藤左官工業所3代目)「(左官業者は)少なくなっていると聞いていますね。」

--番組スタッフ「それはなぜですか?」

--佐藤和洋さん(佐藤左官工業所3代目)「新しいうちを作るときに、昔は外も中も塗り壁だったので人数も必要でしたし、需要もあったんです。今は、外壁はパネルを貼ったり、中もボードを貼ってクロスを貼る。そうするとそれでおさまってしまう。新築を建てるときは玄関のタイルと基礎の部分を塗り上げるくらいの仕事しかない。」

左官業が少なくなってきていても、常に技術を磨き続ける佐藤さん親子ですが、実は現在では珍しい“あるもの”の修理や施工もしているそうなんです。その展示品があるというので案内してもらうと・・・。

--佐藤和洋さん(佐藤左官工業所3代目)「こちら五右衛門小屋です。」

案内してもらった小屋の中には、素敵なお風呂が。

--佐藤和洋さん(佐藤左官工業所3代目)「五右衛門風呂小屋。」

五右衛門風呂?五右衛門風呂といえば、このようなものを想像するんですが・・・。

--佐藤和洋さん(佐藤左官工業所3代目)「丸いお風呂もありますが、ここに入ってるのは四角。見た目には普通の、ユニットバスとかそれと同じようなお風呂の形ですね。だから見た目にはあまりわからないんですけども。」

おしゃれで五右衛門風呂と言われても疑ってしまうほどですね。しかし、なぜ今ではあまり見かけない右衛門風呂の修理や施工もしているのでしょうか?

--佐藤和洋さん(佐藤左官工業所3代目)「ホームページを立ち上げたぐらいに、どこからともなくネットを見たりいうお客様が連絡をくださって。それをメインにやってたというわけではないんですけども。ネットの時代になって、見つけてくださることが多くなりました。」

そう、実は五右衛門風呂は以前から受け継がれていた伝統。しかし、あまり注文は入らなかったそうなんです。そんなときに五右衛門風呂をメインとした会社のホームページを作成。それを見たお客さんが次々と修理や施工の依頼をしてきたんですって。

--佐藤和洋さん(佐藤左官工業所3代目)「県外にも行きますし、一番遠いところだと長野県とか、秋田・宮城・千葉・茨城など行っている。」

主に東日本を中心として、五右衛門風呂の修理や施工を行い、今では福島県内で五右衛門風呂の施工実績トップを誇るほどなんです。そんな五右衛門風呂のプロとして仕事をしている、3代目和洋さん。以前は違う仕事をしていたんだそう。

--佐藤和洋さん(佐藤左官工業所3代目)「スキーの先生をしていました。31歳のときに須賀川市に帰ってきて。」

スキーの先生という、左官業とは似ても似つかない仕事をしていた和洋さん。家業を継ぐ際に、不安などはなかったのでしょうか?

--佐藤和洋さん(佐藤左官工業所3代目)「(不安は)ないって言ったら嘘になりますけれども、左官の仕事も実際なくなっていく方向に今だんだんなってきている。まぁ、そういう不安もありますが、逆に言うと、少なくなっているので、きちっとしたことをやっていけば、なんとか食べていけるんじゃないかと思います。」

そんな和洋さんのことを、父・和良さんはどう思っているのでしょうか?

--佐藤和良さん(佐藤左官工業所2代目)「後を継いでやってくれるというので、仕事が全然なくなるわけではないから。社会からのニーズも少なくなって今はバランスがいいと思う。我慢してやっていればやっていける。普通の人は(仕事がなくなってきたら)諦めて辞めてしまう。」

丁寧な仕事を心がけているからこそ、長年、多くの人から信頼される会社になっているんですね。

『ステップ』
福島県内にて月~金曜日 夕方6時15分~放送中
(2025年3月27日放送回より)

【佐藤左官工業所】
住所:福島県須賀川市雨田字後中山112
営業時間:午前8時~午後5時
定休日:日・祝日