戦後80年プロジェクト「つなぐ、つながる」です。戦前、カナダで活躍した日系人らの野球チームがあります。しかし、太平洋戦争が始まると、迫害を受けチームは消滅。そのルーツを調べる男性の思いとは。
滋賀県彦根市に住む松宮哲さん(77)。家族のルーツを調べています。
松宮哲さん
「こちらが松宮外次郎、祖父になります」
祖父の外次郎さんは1896年、出稼ぎのため、カナダのバンクーバーに渡り、一代で財を築きました。そして、「ある野球チーム」で団長も務めました。
「バンクーバー朝日軍」。日系カナダ人らで結成されたチームです。
松宮哲さん
「“団長”という朝日軍のトップなので、すごいなと思いました」
朝日軍は体格差のある相手に対して、バントや盗塁といった日本流の野球を展開。白人たちのリーグで優勝を重ねました。
しかし、1941年、太平洋戦争が開戦すると、風向きは一変します。
日系カナダ人は「敵性外国人」とみなされ、全財産をカナダ政府に没収され、収容所へ入ることを強いられたのです。
松宮哲さん
「(祖父も父も)どういうわけか(戦時中のことを)話さなかったです。自分らが受けた苦しみを伝えたくなかったのかもしれないし、言いたくなかったのかもしれない」
終戦から43年後。カナダ政府は迫害政策を謝罪し、日系カナダ人らに金銭補償を行いました。
そして、朝日軍の歴史も見直され、2005年には差別の中でもフェアプレーに徹した姿が評価され、当時の選手らにメダルが贈られました。
所在が分からない選手も多かったなか、松宮さんらはその親族を探し出し、これまで15人ほどにメダルを届けたといいます。
松宮哲さん
「祖父が『やれ』と言っているような気がするんです。栄光のシンボルで、子孫にとってはかけがえのない宝物になると思うので」
まだ、メダルを渡せていないのは「円戸」という選手。そこで松宮さんは今月、「円戸」という名字が多いとされる和歌山県を訪れました。
松宮哲さん
「“円戸”という名字の人を訪ねています」
円戸さん
「もう、お父さんは亡くなっている」
松宮哲さん
「カナダに行っていたことは?」
円戸さん
「聞いたことないね」
住民
「『円戸きよし』は私の親戚やけど、そんな話は…(カナダとのつながりが)あったら聞いたんやろうけど、『カナダにもおったんや』とか。僕は母親がシアトル生まれで」
松宮哲さん
「この辺は移民が多いんですか?」
住民
「移民は多いですよ」
7時間探すも、この日に手がかりは掴めませんでした。
松宮哲さん
「結果的に分からなかったけど、『分からないこと』も一つの情報、最終的に見つかるまで続けたいと思っています」
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