「求償権」とは
求償権とは、公務員に故意または重大な過失があった場合、国や公共団体が、その賠償額の割合的支払い(一部支払い)を公務員個人に命令できるものだ。
▼日本大学大学院危機管理学研究科(行政法)鈴木秀洋教授
「報告書も読みましたが、これは逆に行使しないとまずい事案ですよね」
「 “学校の先生は忙しい” とか “学校の先生の責任を過度に追及するのは” という批判はありますが、法が想定している教育活動の範囲があります。今回の事案は法の想定(公務員個人の保護)を超えている事案です」
「こういう場合は求償権が行使されるのだというような、ひとつのメルクマール(指標)、判断基準になるものだと思います。その意味では今回の求償権行使は、正義公平の観点(教育を超えること、県負担の適正、私立学校教員の責任との均衡の観点等)から、沖縄県としては(行使に)悩む事案ではないと考えます」

遺族は元顧問に直接責任を問いたいという心情を抱えるなか、県はこの「求償権」についてどう考えているのか。
県教育庁は取材に「元顧問の行為が国家賠償法の “重過失にあたるかどうか” を弁護士と相談し、対応を検討したい」と回答し、「求償権の行使」を検討しているとした。
ただ学校現場で「求償権」が行使された事例は他府県を見てもかなり少ない。同様の事案に苦しむ全国の多くの当事者が歯がゆい思いをしているのが現状だ。
今回話を聞いた鈴木教授は、県が求償権を行使すれば「最高裁で確定した先例となる大分県で剣道部の生徒が暴行を受け熱中症で亡くなった事案に次いで、全国の類似事案の一つの光になる、教育現場を変え、他県の行政判断にも影響をもたらす」と語っている。