福島県内で長く愛されている老舗の今を伝える『老舗物語』。今回は93年間愛されてきた伊達市の豆腐店を取り上げます。地元のために親子3代で伝統を守り、新たな挑戦を続ける姿を追いました。
まだ世も開けない午前3時半過ぎ。伊達市梁川町にある『一條豆腐店』の1日が始まります。1932年創業。3代目の一條巧さん。40年近く豆腐を作ってきました。
一條巧さん(一條豆腐店3代目)「丁寧にお客さんに喜んでもらえるように作っています。」
名物はツルッとした舌ざわりが特徴の『ざるとうふ』に、わらじほどの大きさがある、特大の油揚げ。その名も『わらじあげ』。93年間、手作りにこだわってきました。
父の背中を追って4年前、家業を継いだのが、息子の司さんです。
一條司さん(一條豆腐店 4代目)「簡単そうに見えてた“にがり合わせ”も実際自分でやってみると、一番最初なんてグズグズの豆腐になりましたし・・・。」
大学卒業後、東京のメーカーに就職し、営業マンとして活躍してきた司さん。父の一言がターニングポイントとなりました。
一條司さん(一條豆腐店 4代目)「2代目のじいちゃんが、高齢になってきて、うちの父親から“いつ現場を離れてもおかしくないよ”と。2代目のじいちゃんの技術をじかで教わるんだったら、今くらいのタイミングしかないよということで。」
2代目で、祖父の巖さん86歳。この道63年。司さんが最も尊敬する人です。
一條巖さん(一條豆腐店 2代目)「いい商品を作ってお客さんに喜んでもらって。“うまかったない”って言われるのが何よりの励みなんです。(4代目は)よくやってます。4代目と一緒に仕事が出来るのは幸せ。」
無くしてはいけない2代目の技術。この『にがり豆腐』です。天然のにがりと県産の大豆を使用していて、旨みと香りが凝縮された、創業当初からの名物です。
にがりの量や濃度によって食感や見た目が変わるため、その作業は60年以上豆腐と向き合ってきた巖さんにしかできないと言います。少しずつですが、祖父の技、そして経験を学んでいます。
一條司さん(一條豆腐店 4代目)「もう仙人みたいなもんですよね。地域の方々からの信頼も、うちのじいちゃんなんかすごいあるので、背中はすごく大きく感じますね。」
司さんは新たな商品の開発にも取り組んでいます。訪れたのは、福島市の菓子店『中野屋』。4代目の早坂知弥さんと、ある商品を開発しました。