■高橋元理事の強い影響力の下にあった「組織委」と「電通」

KADOKAWA会長(当時)角川歴彦被告
高橋元理事の2回目の逮捕容疑となった、出版大手「KADOKAWA」をめぐる贈収賄事件。大会のスポンサー選定などで便宜を図ってもらう見返りに、約6900万円の賄賂をおくったとして、創業家出身の角川歴彦会長(当時)もが逮捕された。当時、出版では、別の大手のスポンサー契約の話が進んでいたが、JNNの取材では、高橋元理事が組織委に対し「KADOKAWAも含めた2社でも良いじゃないか」と伝えていたことが分かっている。

広告会社の「大広」による贈収賄事件でも、高橋元理事の“強い影響力”がみてとれる。広告会社は電通が「マーケティング専任代理店」となっていたが、大広は組織委から承認を受け、「販売協力代理店」として語学関連企業のスポンサー契約を担った。関係者によると、電通サイドには反発の声もあったが、高橋元理事が電通側に「この企業(語学関連会社)は大広が獲得したスポンサー。電通が業務を一手に引き受けるのはどうなのか」と伝え、反発を押さえ込んだという。

「電通」と「組織委」を動かしたのは、長年スポーツビジネスに関わった高橋元理事の経験と人脈だった。

高橋治之 元理事
「組織委の現場は知らない人ばかりだけれど、トップの局長は電通時代の後輩だから、電話で指導したり、人を紹介したりした」

高橋元理事の言葉からは、電通を退いて数年が経っても、なお衰えない影響力が垣間見えた。
JNNの取材に証言する広告関係者
そもそも電通を中心としたスポンサー選定の仕組みが、なぜ必要だったのか。五輪のスポンサー事情に詳しい広告関係者は「組織委がスポンサーを直接集めて契約出来れば良いが、そうすると組織委の中にあまりに大量の専門職が必要になる。日本の広告代理店という商慣習を考えても非現実的」と話した。

「五輪史上、過去最大のスポンサー収入を集める」という“目標”の裏で、透明性は見過ごされていなかったか。

高橋治之 元理事
「自分は組織委からスポーツコンサルタントとしての仕事を期待されて、ただそれをやった。賄賂だなんてとんでもない」
「受け取ったカネはコンサルタントとしての適切な報酬だった」

高橋元理事は逮捕後も一貫して容疑を否認している。世界中が熱狂したスポーツの祭典。公金が使われた開催経費が「ブラックボックス」とされ、そのプロセスが不正で歪められていたのであれば、決して許されることではない。

TBSテレビ 司法記者クラブ(検察担当) 佐藤浩太郎