わたしたちに危害を加える昆虫、スズメバチ。8月中旬頃から駆除依頼が集中し、10月上旬には落ち着き始めるそうなんですが・・・実はこの時期、スズメバチは、怒っているんです!!!いったいなぜ?そして、もし遭遇したときどうすればいいのか? 専門家に伺いました。
昆虫研究家の角田正明さんにききました。角田さんは様々な昆虫の生態を研究されていて、今回は、その中でもスズメバチについてお話いただきます。この時期、『スズメバチは怒っています!』ということなんですが、なぜですか?
角田さん:
「この時期っていうのは、スズメバチの働きバチの数が最も多くなる時期なんです。巣も大きくなってますし。ただその一方で、冬が近づいてくるのでエサとなる虫たちが減ってきているので、なかなか働きバチの数は多いけど、餌が見つからない。そしてまた巣を守る本能がすごく高まっている時期なので、非常に気が立っている」
スズメバチにも種類があると聞きますが、遭遇しやすい種類はありますか?
角田さん:
「世界で約80種類、日本で16種類いるんですけども、山口県には9種類発見されていて、その中でも最も会いやすいのが、コガタスズメバチからキイロスズメバチ、オオスズメバチの3種類。コガタスズメバチというのは別に小さいわけではなくて、巣が小さいということでコガタスズメバチといいます。キイロスズメバチは市街地に多く住んでるので非常に攻撃性が強く、刺される被害が多い。オオスズメバチは日本最大でもあるんですけども、世界最大のスズメバチでもありますので、最も強くて凶暴なんですよね」
どういうところに巣は作られるんでしょうか?
角田さん:
「共通して言えるのは、雨風をしのげる場所。特にコガタスズメバチ、キイロスズメバチは人家周辺に作ることが多いので、要注意なんです。お互いに住み分けながら、お互いを共存してるよいうことはあります」
この3種類の中の1つ、最も危険といわれたキイロスズメバチの巣の駆除現場に立ち会うことができたのでご紹介します。本当に、我々の身近なところに、危険が潜んでいました。

ご協力いただいたのは、駆除歴19年のハチの巣ハンター、上田始さんです。駆除依頼があったのは、山口市仁保。巣は・・・住宅2階の軒先にありました。キイロスズメバチの巣。大きさは、直径4~50センチほどです。

駆除を依頼した住民:
「草とりよったの朝。上をぱっと見たらね、こんな大きなものがあるから、びっくりして。見上げたらすぐ気づくくらいの大きさになるまで・・・それが気づかなかったの。あそこを見たら目立つんだ、気にしてなかったら分からんかったね・・・」
気にしていなかったら、気が付かない。これが実態です。撮影したのは、ことし8月下旬。この時期のハチは、まだ比較的穏やか。

カメラがここまで近づいても…攻撃してきませんでした。
駆除にかかった時間は、わずか7分。遠くから殺虫剤を吹きかけ、ハチを弱らせたあと・・・
のこぎりで巣の付け根からそぎ落とします。
駆除した巣がこちら。中は、6層になっていました。
上田さん:
「これぐらいだと、500匹くらいと思いますけどね。また、次生まれてきたら、1000匹単位になる」
駆除を依頼した住民:
「巣ができたのは、37年で初めて。こんなに大きなのを作ってから・・・あれがみな、ハチになったら大変ですね。本当・・・うっかりです」
とあるお宅のケースをご紹介しましたが、かなり身近に危険が潜んでいるんですね。こんなに家の近くにあるのに、気が付かないものなんですね。
角田さん:
「実はキイロスズメバチは引っ越しをするという習性があって、最初は気づかなかったっていうのはそうだろうと思うんです。初めは家の壁の隙間あたりで、女王バチが50匹ぐらいの働きバチを作って、そして一緒に引っ越しをして、一気に2階の軒下あたりに作り上げてるんです」
さきほどの50センチ程度の巣はどれぐらいの期間でできる?
角田さん:
「働き手が多いと作るのも早いから、多分1ヶ月ぐらいで作ったんじゃないかなと思いますね」
今回はその実物をスタジオに持ってきてもらいました。これでどれぐらいの大きさがありますか?
角田さん:
「ケースに収まらなかったんでちょっと削ってしまったんですけど、70センチぐらい。これはキイロスズメバチなんですけど、木の上に作られました。これ多分2ヶ月弱ぐらいだと思います」
この巣は何でできているんですか?
角田さん:
「焦げ茶色はおそらくスギとかヒノキのめくりやすい木の皮なんです。働きバチが多くなってくるといろいろ重ねていくので、こういう波模様になるんです」
ハチが急に襲ってくることはあるんですか?
角田さん:
「そんなことはなくて、本来スズメバチは自分自身が危ない、襲われるって思うことか、自分の大切な巣が襲われて被害及びそうなときに限って攻撃してくる。いちばんやっちゃいけないのは、手を横に振るような動きです。動きは大きな身振り手ぶり、特に横の動きに対してハチはすごく敏感に攻撃を仕掛けてくるんです」
ハチを見つけたら、どうすればいいですか?
角田さん:
「特にスズメバチは目の構造上、下が見えにくい。ハチの目線よりも自分を低くしてそっと後ずさりする。黒という色はすごく過敏に反応するので、黒い服を避ける。整髪料・香水などの臭いも過激に反応するので、気をつけた方がいい。山に行くときは特に気をつけた方がいいでしょう」
ハチの巣はこの大きさになるまで気付かれないこともあるということで、もし見つけたら、専門の駆除業者にすみやかにご連絡ください。ハチの数が増え、かつ攻撃的になっているこの時期のスズメバチ、くれぐれもご注意ください。