福島第一原発の事故で飛散した放射性物質を削り取るなどした「除染土」。その量は東京ドーム11杯分に上り、福島県内の中間貯蔵施設で保管されいます。2045年までに福島県外で処理することが法律で決まっていますが、「理解」も「処理の道筋」も進んでいない現状があります。負担は福島だけが背負うことになるのか…被災者からは不安の声が聞かれています。

見えぬ「除染土」の行方 負担は福島に?

「除染土壌運搬」と書かれたトラックが行き交うこの場所。福島県大熊町にある中間貯蔵施設の敷地です。原発事故に伴う除染で出た土「除染土」を保管する場所ですが、ここもかつては人が暮らす町でした。

月に一度、この場所に通う松永秀篤さん(72)。ここにあった自宅は2011年3月11日、津波で流されました。

松永秀篤さん(72)
「囲炉裏は残っていたんだ。これは囲炉裏で、ここで一家団欒を。炭をおこして、魚や鶏を焼いていたところ。みんな集まって」

原発事故がなければ、再びここに家を建てて暮らしたかったという松永さん。先祖代々受け継いできた土地は、かけがえのない場所でしたが…

松永秀篤さん
「手放しちゃったけどね。復興のためには本当にどこかが犠牲にならないと、仕方がないのかな」

2017年、土地を中間貯蔵施設として国に売却しました。

大熊町と双葉町にまたがる広大な土地に設けられた中間貯蔵施設。保管されている除染土は約1400万立方メートル。東京ドーム11杯分に上ります。

ただ、ここでの保管はあくまで一時的なもの。国は2045年までに福島県外で最終処分すると法律で定めています。

松永秀篤さん
「『最後までここに置くわけじゃない。県外に何年か経ったら出しますから』『いずれ必ず綺麗にして戻すから』という約束だったから、その約束を信じて決断するしかないなと」

一時的な保管を前提に土地を譲ったという松永さんの。しかし県外の最終処分場の選定はまったく進んでいない状況です。

国は最終処分する除染土の量を減らそうと、公共事業などに再利用する方針を示していて、東京・新宿御苑などでも除染土を使った花壇を作る実証実験が行われる予定でしたが…

反対する人たち
「放射性物質は移動させるな!」

福島県外での実証実験は、住民の理解を得られず頓挫しています。

進まない状況に、3日、中間貯蔵施設のある双葉町の町長は…

福島・双葉町 伊澤史朗町長
「県外最終処分や再生利用について、十分に理解が広まっていないことに危機感を抱いております。まず、福島県内での再生利用に努めることが、県外での理解醸成に繋がるのではないか」

国が約束した県外処分の期限があと20年と迫る中、まずは福島県内で除染土を再利用し、理解を広げていく必要があると指摘しました。

ただ、地元の住民は複雑な思いを口にします。

松永秀篤さん
約束は約束なんだから反故にしないでねというのが、今一番強い希望。『大熊町・双葉町で最終処分場にもなってくれませんか」だけは勘弁してねと」