開店1時間前、まだ静かな店内に、1人の女性が出勤してきました。

伊藤季巳可(いとう・きみか)さん33歳。

1階にあるファンションブランド「トミーヒルフィガー」の店長です。


伊藤季巳可さん:
「(朝の気持ちは)全然違います。いつも通り来たいなと思っていたんですけど、いろんな方から『最後頑張ってね』って応援メッセージをもらって、全然いつもと違いました」

パルコからほかの商業施設に移転するテナントもありますが、「トミーヒルフィガー」はこのまま閉店するため、この日が本当に「最後の1日」です。

「(お客さんから)お花がいま届きました」
「え~ありがとうございます!朝も応援メッセージもらって…サプライズ」

「じゃあ最終日頑張るぞ、おー!」

「わ~!西澤さん!」

開店早々訪れた、女性客。

夫婦で10年近くこの店に通っていたといい、最後に、注文していた商品を受け取りに来ました。

常連客・西澤満枝さん:
「(買ったのは)旦那さんの夏のTシャツ。これからの季節もまだ買った服を着て、(店のことを)思い出していこうと思っています」

伊藤季巳可さん:
「営業中だったら、夏物は夏が来たら買えばいいというのが当たり前だったんですけど、(夏にはもうないという)そういう思いで皆さん買っていただいているのかなと思うと…」

感謝とともに、やるせなさも溢れます。

だからこそ。

接客する伊藤さん:
「フルジップだと温度調節がしやすいです」
「そうだよね、開け閉めすればいいもんね」

最後まで全力で、お客さんと向き合います。


伊藤季巳可さん:
「お客様との時間って一番好きで、自分もそういう気持ちでいられたらお客様も楽しいだろうし、そういう気持ちをずっと大切にしてきた気がします」

ファッションが好きだった高校時代、地元の茅野から度々足を運んだ“憧れ”のパルコ。

伊藤季巳可さん:
「担任の先生がトミーが大好きで、もうアパレルやるんだったら、松本パルコで働くんだったら絶対トミーにしなさいと」

高校を卒業後「トミーヒルフィガー」の販売店を運営する会社に入社し、以来14年間ここで働いてきました。

伊藤季巳可さん:
「地域の皆さんに感謝の気持ちを、今回の“まつぼん”を借りてお礼ができたらなと」

「パルコ!パルコ!」

閉店半年前の2024年8月には伊藤さんが発起人となり、「松本パルコ連」として22年ぶりに「松本ぼんぼん」に参加。

地域への感謝の思いを深めながら、パルコで過ごした日々をかみしめてきました。

「元気か?」
「元気だ!」
「最後に会いに来たよ」
「ありがとうございます。最後に来てくれると思わなかったです」