■自身の長男を秘書官に起用 公私混同との批判に総理は?


後藤部長:
最近も首をかしげたくなるような決定がありました。

ーー具体的にどんな決定ですか?

後藤部長:
先週、内閣総理大臣秘書官の人事で、岸田総理は自身の長男の翔太郎氏の起用を発表しました。翔太郎氏はこれまでも岸田総理の事務所で秘書として活動していました。そうした意味では仕事の場を事務所から、総理官邸に移したという説明も十分あると思います。しかしこれもタイミングがどうなのか。臨時国会が始まった直後にこの人事が発表されました。すかさず野党側は“公私混同との批判も招きかねない人事”だと追及しました。

支持率が低迷していることもあって与党内からも“なぜこのタイミングなんだろう”という声が上がったのですが、そういった疑問に対して岸田総理は
▼危機管理の報告体制
▼党との連携
▼SNS発信

などを例に挙げています。

確かに翔太郎氏は岸田さんが総理に就任する前から、秘書活動を行っていました。最も身近な存在です。

総理大臣というのは一国の最高権力者です。孤独な決定とか環境を強いられていくことを考えると、一番身近に肉親とか、身内を置きたいという気持ちはあるのだと思います。実際過去にも、総理が自分の親族や家族を秘書官に置いたという例はありました。

やはり支持率低迷に苦しんでいる中、野党や世論に攻められる材料を、さらに支持率の低下に拍車を招きかねないようなタイミングで出すというのに、明確な説明が乏しいと疑問を感じます。

ーー与党内からも疑問の声が出たということですが、“ちょっと岸田さん今はやめた方がいいのではないか”という声はなかった?

後藤部長:
この2つの事例を取り上げてみて、岸田政権が抱える弱点というか、“失敗の本質”のようなものが見えてきたのではないかと思います。

これはリスクに対してどう向き合うか。リスク対応・リスク管理という部分で、若干今の政権は弱いのではないかと思います。

これが一企業で言えば大きな商品開発をするなど、社運を賭して行う事業についてはあらゆることを議論すると思います。売れなかったら、売れたとしても別のリスク要因がありますね。こうした色々な角度からリスクを洗い出して検討しています。それでもやるとなった場合は、こういったリスクが浮かび上がってきた場合にどういった対応をするかを綿密に議論して、対応するというのが一つの在り方だと思います。

私が今回上げたこの2つの事例については、どうもリスク対応にどれぐらい議論したのだろうか、若干希薄だったのではないかという気がします。

今後、国会・臨時国会がいよいよ本格的に始まります。夏までの岸田内閣は支持率は良かった。それが追い風になったのですが、これからは支持率の低迷で内閣や総理の一挙手一投足が命取りに繋がりかねないという状況です。リスクコントロールをどう徹底していくのかが、臨時国会を乗り切れるかどうかのカギになると思います。

==========
後藤俊広
TBSテレビ 報道局政治部長

小泉純一郎内閣時から政治報道に携わる。郵政民営化を巡る自民党の小泉VS民営化反対派の闘いや自民→民主、民主→自民の2度の政権交代などを現場記者として取材する。趣味はプロ野球観戦で中日ドラゴンズの落合博満元監督を取り上げた「嫌われた監督」が座右の書

執筆者の記事を見る

▼関連記事
世論調査はどう行われているのか 北の大地で“世論”と向き合うオペレーターたち
“権力闘争を繰り広げるための基盤”“二股禁止”「派閥」とは何か?
30年前のデジャブ 岸田総理は“令和の宮沢喜一総理”となるのか?