■幾島監督からのメッセージ
私は何度もクマに会ったことがあります。それは偶然ではありません。
2019年、札幌市南区の住宅地に毎晩のようにクマが現れるようになりました。日中に取材に訪れた私は、クマはなぜ、どうやってたどり着いたのか、ルートを予想しながら現場を歩きました。ここではないかと思った場所を撮影。日が暮れるまでまだ時間はありましたが、念のため早めに車に戻ろうとドアに手をかけたそのとき、バキバキと大きな音が聞こえたのです。見ると、先ほど撮影していた場所から、ゆっくりと黒い前足が現れました。
悔しかった。
ここがクマの通り道ではと予想した理由は、前年の島牧村の取材があったからです。出没の原因が共通していて、また同じ課題が繰り返されてしまったのです。その後も各地でクマに怯える人、大切な人を失った人の声を聞くたびに、悔やんできました。
クマの取材を始めてたった1年の私が通り道を予想できたということは、「背景を知っていれば出没を防ぐ術がある」ということでもあります。課題は人間社会にある、つまり解決のカギも人が握っているのです。
あなたの命や暮らしを守るために、小さな村の日々を「じぶんごと」として見てほしいです。
「劇場版 クマと民主主義」は東京と札幌で限定上映されます。
■東京 ヒューマントラストシネマ渋谷
3/30(日)18:30~(1回のみ)
■札幌 シアターキノ
4/5(土)14時台
4/7(月)18時台
4/9(水)18時台
※4/5(土)は上映後、酪農学園大学・佐藤喜和教授と幾島監督によるゲストトークあり

■監督プロフィール
幾島奈央 2018年HBC入社。報道部では警察・司法担当。ディレクターとしてテレビドキュメンタリー「クマと民主主義」3作(放送文化基金賞奨励賞/企画賞)、「核と民主主義~マチを分断させたのは誰か〜」(2021・ギャラクシー賞奨励賞)、ラジオドキュメンタリー「隠された性暴力~28年前の少女からの訴え~」(2021・ギャラクシー賞奨励賞/日本民間放送連盟賞優秀賞)を制作。21年7月からデジタル推進部。WEBマガジン「Sitakke」で暮らしの知恵や北海道の魅力、多様な価値観について発信している。23年4月にはクマと人の“いい距離の保ち方”を考えるサイト「クマここ」を立ち上げた。
専門家監修の「クマに出会わないために」「それでも出会ったら」の基本の知恵や、全道の出没からの教訓などを紹介している。自治体や企業・学生などと協力しクマ対策や啓発のイベントも実施。「知ることで防げる出没や被害がある」と考え、様々な形で発信を続けている。