「写真や記録ではなく、そこに立つことで感じることがある」

被爆者の治療を見守った建物は、病棟としての役目を終えた後はカルテの保管場所などに使われていました。そして1995年、保存工事を経て被爆資料室として整備され、いまもその姿を残しています。

資料が展示されている部屋は、多くの患者が詰めかけた場所でもあります。床、壁に貼られているタイルも、あのときのままです。

被爆建物の保存活用に取り組む高橋信雄さんは、子どもたちをこの場所に案内し、当時の状況を伝えています。

原爆遺跡保存運動懇談会 高橋信雄さん
「写真とか、記録ではなく、そこに立って感じるものは、全く違うと思う」

旧外来棟は、2018年に日本郵政から広島市に寄贈されました。広島市は、この建物を原爆資料館の付属施設とし、再整備をしていく方針を示しています。

広島逓信病院旧外来棟

一方で、資料室として活用されているのは、1階のほんの一部です。高橋さんは、いまも当時の面影がある手術室を残しつつ、「建物全体で被爆の記憶を伝える施設にしてほしい」と話します。

高橋信雄さん
「当時の形で残っているものが、一つでも多く存在するということが、あの日の広島を引き継ぎ、語り継いでいく。受け止めていく意味で、大きな力になる」

ヒロシマの記録を未来へつなげる。被爆建物もまた、その役割を担っています。