性格と区別がつきにくい「グレーゾーン」
この裁判を傍聴して、筆者は、裁判長が母親に「殺すよりは、その辺に置いてくるほうがましなのでは?捨てるだけでも生命維持の可能性があったのでは?」と質し、母親が「それ(殺害)しかないと思った。今となればそう思う」と答えた場面が印象に残りました。
障害特性の「グレーゾーン」は、性格との区別がつきにくいことや、本人にその自覚がないこともあって、支援の手が届きにくいという現状があります。
この事件では、本人も家族も、事件後、専門家に指摘されるまで障害特性だと気づいていませんでした。
また、母親が望まない妊娠に至ったということは、不明とはいえ、赤ちゃんの父親は確かに存在し、その父親にも責任があります。
精神科医は「母親に、早期に適切な療育があれば」と話しました。母親の幼少期には、いまほど発達障害への理解もなく、支援も限られていました。
長年困りごとを抱えたまま、誰にも相談できずに暮らしてきた母親。弁護側は、母親は、事件が発覚してほっとしたと話し、診断結果を受け入れ、障害特性を理解し、治療を受け、再出発を図るとしています。