香川県高松市で、母親が自宅の押し入れに赤ちゃん3人の遺体を遺棄し、うち1人を殺害した罪に問われている裁判員裁判が、2月に高松地裁で開かれました。
殺人と死体遺棄の罪に問われたのは、高松市の元風俗店従業員の母親(36)です。
殺人と死体遺棄の経緯は、色恋営業のターゲットにされた元風俗店従業員 なぜ妊娠・出産を繰り返し 3人の赤ちゃんの遺体を遺棄したのか【前編】にまとめています。
母親は、なぜ妊娠・出産、遺棄を繰り返したのでしょうか。

精神科医が指摘する「生まれ持った特性」とは
証人尋問では、全国で同様の事件の被告を支援する活動に取り組む、熊本の精神科医・興野康也さんが、「被告には障害特性があった」と述べました。
(精神科医 興野康也さん)
「赤ちゃんを殺さずにおれないというふうに、本人が結論を出すプロセスに至っては、ADHD(注意欠如・多動症)の要素が濃厚に関係していまして」
「被告の女性1人がだめで勝手に殺した、というんだったら別ですけど、全然そういう事件じゃなくて、まわりのいろんなものが追いつめていった面がある」
興野さんは、母親が赤ちゃんを殺害した当時、家族からも社会からも断絶していた背景には、「脳機能障害に基づく神経発達症を生まれ持っていたことがある」と指摘しました。
その特性は、母親本人も家族も気づいていなかったもので、母親が「自ら孤立した」とする検察の認識とは違い、家族からの孤立を自己責任とはいえないとしました。
また母親は自己肯定感が低く、「相談能力低下・SOSが苦手」という特性があり、行政や友人にすがれなかった。
妊娠・出産・死体遺棄を繰り返したことは、そうした特性からくる諦めやすさ、短絡さ、経験から学ぶことの苦手さがあった、とも述べました。
興野さんは「障害特性のいわゆるグレーゾーンは、『性格』ととらえられやすい。本人に自覚がなく、人間関係にトラブルも起きやすい。幼少期から支援につながっていれば」と述べました。