救急医療をめぐる問題についてです。

おととし福岡県内で救急車で搬送された人の数は27万人を超え、過去最多となりましたが、このうち4割以上が入院の必要がない軽症者でした。

中には「タクシー代がない」といった理由で救急車を呼ぶ人もいて、いま救急医療の現場をひっ迫させています。

軽症者の救急搬送が増加

「わかります?大丈夫?頭のCT撮ろうかね」

救急搬送されてきた患者の対応に追われる医師や看護師。

「ちょっと動かしますよ」「力抜いて」

福岡市民病院では365日24時間体制で重症患者などを受け入れています。

しかしいま、ある深刻な問題に悩まされています。

それが「軽症者の救急搬送」

年間およそ3700台の救急車を受け入れる福岡市民病院。

ここ数年、軽症者の救急搬送が増えてきているといいます。

小野雄一 医師
「これ救急車で来なくてもと思う数が、体感的には3割4割くらいっていうイメージは当院ではありますね」

搬送者の多くを占めているのが「高齢者」です。

取材をしていたこの日。市内に住む80代の女性が救急車で搬送されてきました。

毛利一臣 医師「今痛いのは膝ですか」
80代女性「はい」
小野雄一 医師「あ、全然曲るね」
毛利一臣 医師「曲げるよ」「痛い?これ」
小野雄一 医師「大丈夫やね」

路上を歩いていた時に転倒したという女性。

ひざの痛みを訴え、レントゲン撮影も行いましたが、異常は見られず、そのまま帰宅しました。

小野雄一 医師
「本人も言っている通り、前からなんやってずっと言っているので、いわゆる救急ではなくて年齢的なもので、前の病気をみると前から膝は悪いので・・・」

取材をしていた午後5時から10時半までの時間に、7人が救急車で搬送されてきましたが6人は軽症でした。

軽症者による救急車の利用が増えれば、重症者の搬送や受け入れができず、救える命が救えなくなると危機感を抱いています。

平川勝之 医師
「安易に受診される、救急車を使われるというのはですね、自分だけ考えるといいかもしれませんけれども、ほかの人を危険にさらす行為になるということをぜひ理解していただきたい」

福岡市内で救急車が出動した件数はこの5年間で年々増加。
去年は過去最多の10万181件にのぼりましたがこのうち半数近くが軽症者でした。

福岡市のデータ

① 救急出動件数
  2019年:81447件
  2020年:72700件
  2021年:78424件
  2022年:94792件
  2023年:100007件
  2024年:100181件

② 救急搬送者の内の軽症者の割合
  2023年:48.3%
  2024年:45.7%

「医師の働き方改革」で人手不足に拍車

さらに去年4月からの「医師の働き方改革」で労働時間に上限が設けられ、多くの病院が人手不足に。

日本医師会が去年調査した結果、15.6%の病院や診療所が「救急車を断る回数が増えた」と回答しました。