トランプ政権内で対立も 目玉の関税政策めぐり

――トランプ政権内は、意思が統一されているのか。

明星大学経営学部教授 細川昌彦氏:

今は政権内の政治力学がわかっていないと、この構造はわからないと思う。政治力学とは何かというと「MAGA派」アメリカ第一主義を首謀しているナバロ氏という上級顧問。序盤戦では彼は一番、声が大きい。そしてバンス副大統領もMAGA派。それに対して温和で「関税をかけすぎるとアメリカ経済が良くならない、まずい」と言ってブレーキ役をするのが「親ビジネス派」でウォールストリートから来ているベッセント財務長官とラトニック商務長官との綱引きが日々起こっている。例えばナバロ氏が主導して「メキシコ・カナダに関税25%をかけた」と。しかししばらくしたら「1か月先に猶予する」と。これはベッセント財務長官がその間、交渉してやめさせるためにやっているという綱引きが起こっている。ある一人が綺麗な理屈で整理してやっているわけではない。

――トランプ大統領が、全部計算して決めているわけではない?

明星大学経営学部教授 細川昌彦氏:

わざと対立させる。その上で「最後は俺が決めるぞ」ということで、そのときのトランプ氏の覚えがめでたい人たちの声が出てくるだけ。真面目に理屈をつけて説明するのはおかしい。

――親ビジネス派は米国経済が悪くなると困るから説得する?

明星大学経営学部教授 細川昌彦氏:

ポイントは株価。第1期トランプ政権を見たらものすごくわかりやすい。トランプ大統領は2026年の中間選挙で勝つことがポイント。そのためには株価が維持されてないと駄目。ベッセント財務長官は、株価維持のためのブレーキ役とみられる。

日米首脳会談の成果は 合意内容をどう評価?

――日米首脳会談が成功だと石破総理も言っているが、鉄鋼・アルミ関税や相互関税の話は出なかったのか。

明星大学経営学部教授 細川昌彦氏:

出ていない。これは単なる顔合わせだけで、試合は始まっていない。野球の試合前にお辞儀するのと同じ。だから試合はこれから。今はもう試合が始まっているが、このときはまだ始まっていないとみる。あれだけで成功・失敗という評価の議論をするのは早計だ。

――これから日本が交渉で関税の適用除外になるために切るカードはもうないのでは?

明星大学経営学部教授 細川昌彦氏:

カードを切ってるようには思わない。対米投資も今8000億ドルであと2000億ドル上乗せすればよい。ソフトバンクが大規模にAI投資するから成り行きで1兆ドルになると言っているが、別にこれでコミットしたわけではないが、相手はコミットと受け取ったと思う。アメリカ産のLNGも高ければ買わない。そこは適正価格で、あるいは日米双方が利益のある形といったキーワードがある。価格次第ということだ。

――アラスカ産のLNGを買うとか、日鉄は49%でもよいとか約束はしていない?

明星大学経営学部教授 細川昌彦氏:
一切していない。特にアラスカ産LNGは、筋悪な案件。採算が取れない。アラスカ州の北にガス田がある。そこから南まで1300キロのパイプラインを永久凍土の上に引いて日本に持って来いという。440億ドル、6~7兆円かかる、誰が出すのかという話。だからアメリカの石油会社、エクソンやシェルは手を引いている。そのババをつかまされるのが日本・韓国という構図になってはいけないので、一切こちらからは言わない。アメリカはハガティ元駐日大使のように提灯持ちをする人が多くいるので、気をつけなければいけない。日本の経済界も関係業界も一切関心を持ってない。採算が絶対取れないということをわからなければいけないと思う。

(BS-TBS『Bizスクエア』 2月15日放送より)