最近この「菰焼き」が下火になってきている?なぜ?

(大野さん)
「ところで、この菰焼き、最近では下火になってきていて、やめてしまっているところも増えています」

「というのも、この菰の中には都合よく害虫だけが入るわけではなく、害虫の天敵となるヤニサシガメやオオトビサシガメ、テントウムシ、クモなどや、害虫とは関係のない虫たちも多く身を寄せ合って越冬しています」

「特にもともとのターゲットとしていた、害虫であるマツカレハなどは菰の中だけではなくあちこちに分散して越冬しているにもかかわらず、肉食カメムシやテントウムシなどは仲間同士で集団越冬するものがいて、しかもその数自体も餌になる害虫よりもそもそも少ないため、かえって数の少ない天敵を一網打尽にしてしまう可能性があって、そうなってしまうと本末転倒だから、というのが大きな理由だそうです」

ーでは菰巻き、菰焼きは意味がないのでしょうか?

(大野さん)
「確かに、寝込みを襲って一網打尽!という方法では逆効果になることもあるかもしれませんが、菰の中に天敵が多く潜んでいるのであれば、冬の間に天敵を保護するおうちにするという考え方もいいかもしれません」

「菰をめくってみて、その中がどのような状態なのかを確認し、必要に応じて対策を変えてみるのもいいかもしれません。冬の間に害虫を駆除してくれる天敵を守るおうちになってくれる菰をしっかり巻いておけば春になったら害虫を食べてくれるわけですから」

「季節の風物詩として、先人の知恵と現代の科学がうまくかみ合わせてこれからも残っていってほしい文化だと思います」

「冬の訪れの前に樹木にまかれた腹巻のような『菰巻き』、少し日差しが緩み春の訪れを感じる時期の『菰焼き』、みなさんの周りでも季節を感じる風物詩として残っていれば少し気にかけていただければ幸いです」

虫が目覚める時期の目安とされる「啓蟄(けいちつ)」は、3月5日ごろで、二十四節気の第3で、2月節です。

七十二候の「蟄虫啓戸(すごもりむしとをひらく)」も3月5日ごろ。越冬していたとかげやへびなどの小動物も含めて、虫たちがそろそろ目覚める時期はもうすぐです。