コメ価格の値上がりが続く中、政府は備蓄米の放出を決め、準備を急いでいます。17日、具体的な売り渡しの説明会が行われましたが、備蓄米はいつ消費者の元に届くのでしょうか。

消えたのはホントに21万トン? 国が把握しているのは…

井上貴博キャスター:
2024年夏ごろからずっとお伝えしている“コメ不足”の問題、何がボトルネックになっているのでしょうか。

原因のひとつとされているのが『消えた21万トンのコメ』です。

2024年のコメの生産量は約735万トンあるとされてます。“21万トン”は全体の3%にすぎません。3%のコメが消えただけで、こんなに価格に影響するのか。政府はなぜ『21万トン』という数字を算出したのでしょうか。

キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁研究主幹によりますと、コメの流通ルートは2つあるということです。

2024年のコメの生産量約735万トンの約半分がJA、残りの約半分がJAを介さず、直接、卸や小売業者が買い付けるといいます。

【コメの流通ルートは2つ】
(1)生産量の半分→JAなど集荷業者→卸・小売り業者→消費者
(2)生産量の半分→卸・小売業者→消費者

JAを介さないルートの場合、政府が把握するのは難しいのだろうと予想ができますが、JAを介していても難しいようです。

キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁研究主幹は「(JAを介していても)国が把握できているのは集荷業者ルートの一部のみです」としています。

つまり国が把握しているのは、約735万トンの半分うち、大手業者の取り引き分のみで、そこから“消えたコメ”を算出しているので、実際には21万トン以上なのではないかということです。

良原安美キャスター:
実態は21万トン以上あるということなのでしょうか。

宇都宮大学 小川真如助教:
把握できていないコメは21万トンより多い可能性があります。少なくとも2024年産米は2023年と比べて18万トン収穫量が増えています。

これと『消えたコメ21万トン』を足し合わせると『18+21=39万トン』です。大きく見積もった言い方になりますが、実際には(消えたコメ21万トンより)さらに把握できていないコメがあると思われます。

産婦人科医 宋美玄さん:
2024年夏のコメ不足のときはどこにも売っていなくて困りました。現在は、販売しているものの価格が高騰している状況かなと思います。

消費者としては、不作などであれば納得しますが、消えてしまって誰かが価格を釣り上げるようなことをしているのであれば、解明してほしいです。

井上キャスター:
JAを通していない業者の流通を把握できないのは仕方ないのかもしれませんが、もう少し全体像を把握しないと毎年のように同じような状況になるのではないでしょうか。

宇都宮大学 小川真如助教:
コメがどこにあるのか?という不透明感が不安となり、コメの集荷競争に繋がった面もあると思います。

これまでの法律の中で流通の多様化が進められ、SNSやホームページなどで農家と消費者が直接やり取りできるようになってきました。自由に取り引きできるメリットの反面、このようなことも起こりうるということが、今回如実に表れたかなと思っています。

国が全部を把握すればいいのかという点はまた議論となりますが、自由化するとこのようなことが起きうるということです。