医療費の助成は被爆者と同じだが被爆者ではない「ねじれ」
去年12月から新しい制度の運用が始まっています。

原告・濵田武男さん(85)
「本物じゃないばってんニセの手帳が来た」

医療費の助成は被爆者と同じ、でも被爆者ではないという「ねじれ」。
原告・濵田武男さん(85)
「もう命がもたん…本物の手帳もらうまで…。事実だけを自分は言いたい。金は要らんよ。体験者って言われてそのまま人生終わりたくないね」

原告が訴えているのは原爆のさく裂で発生し雨や灰、塵と共に広がった放射性微粒子による被ばくの影響です。

病理学の専門家、長崎大学の七條和子さんは半減期2万4千年のプルトニウムの微粒子が体内で細胞を傷つけ続ける可能性を指摘しています。

長崎大学・七條和子客員教授
「(亡くなった被爆者の細胞に)プルトニウムの放射能の粒がある。これから放射能がトントントンと出ていく」

18日から始まる控訴審。原告弁護団は長崎地裁判決が「精度が劣る」として採用しなかった1945年アメリカ軍の残留放射線調査について、新たに行った現地調査を元に「信頼できる」と反論。原告はこの調査で放射線が検出された地域にいたため被ばくした可能性があると訴えます。

原告弁護団・三宅敬英弁護士
「早めに和解案を出して欲しい。判決となると広島でも半年位判決書くのにかかって、またその間に原告たちが亡くなってしまうのが耐えられないので」

原告の村田勝子さんと姉のスミ子さん。一審判決で雨は降らなかったとされた旧日見村で、きょうだいで行ったおつかいの帰り「黒い雨」を浴びたと証言しています。

原告・村田勝子さん(83)
「雨が降ってきて、雨を二人で眺めよったら、シゲノおばちゃんが『あんたたちなんしよっとね。はよおいで雨の降るよっとに』って言ってからね」

姉・中村スミ子さん(86)
「墨をぱっと散らかすと黒くなるでしょ、あんな感じ。(一緒にいた)お兄ちゃんはもう60で亡くなりました。大阪に居ましたけどね。なんで私はこんなにあっちもこっちも悪いんだろう。赤ちゃんも生めない様な状態だねって。7回位流産ばっかりしちゃって」
(Q・日見は降ってないから被爆者じゃないと、それについてはどう思われますか?)
「私はねそれは嘘と思います」

原告の証言について被告は「自分にとって都合のいい情報を集めるバイアスの影響もあり得ることに留意すべき」として信頼性に疑問を呈しています。

原告・末永ミツ子さん
「被団協はすごい賞を受けられました。その陰で私たちはいつ実の手帳が来るのでしょうか?それとも消え去ることを待っておられるのでしょうか?」

原告団長・岩永千代子さん
「もう5人亡くなりました。手握ってね岩永さん頑張ってねって言った人も。その人権を(守らないと)」

長崎市(被告)・鈴木市長
「一刻も早くこの問題取り組んでいきたいと思います」
原告団長・岩永千代子さん
「高裁がどういう判決を下すかね。雨と灰が別だなんてそんなことあり得ない。分かって欲しいね」
核兵器の恐ろしさを訴える「証言」。被団協ノーベル平和賞受賞の陰で証言が軽視され続ける被爆体験者の訴えが続いています。
控訴審は今月18日、午後2時から福岡高等裁判所で始まります。