津波で大きな被害を受けた福島県浪江町の請戸地区で、16日、300年以上続く「安波祭」が開かれました。伝統の田植踊には、県の内外から踊り手が参加し、今年も地元で奉納されました。

浪江町請戸地区のくさ野神社(※くさは草かんむりに召)は、震災の津波で社殿が大きな被害を受けましたが、去年再建され、16日、海の安全や豊漁などを願い、300年以上前から続く安波祭が開かれました。

県内外の避難先から帰ってきた人など多くの人たちが見守る中、花笠をかぶった早乙女姿の子どもたちが伝統の田植踊を奉納しました。

震災前は、子どもたちだけで披露していた田植踊。震災・原発事故後は請戸地区が一時避難区域となり、子どもたちは県内外に避難しているため、踊り手を集めることが年々、難しくなっています。今回参加した12人のうち、小学生以下の子どもは4人にとどまりました。

南相馬市から参加した姉・鈴木寿奈さん(小6)「再建されて2回目の踊りだったので、ちゃんと思いが伝わるように踊りました」
妹・鈴木詩乃さん(小3)「風が強かったけれど、神様が応援してくれているのかなと思いました」

田植踊を指導する佐々木繁子さん「遠くに避難している子どもたちが集まって(田植踊が)奉納できたことは大変嬉しく思います」

本来よりも踊り手全体の人数を減らし、大人も踊りに混ざることで伝統を継承し続けています。指導する佐々木繁子さんは、田植踊は「ふるさとそのもの」だと話します。

佐々木さん「この踊りがどれだけ私たちの、震災以降、心の支えになってきたか。先代から続いてきたこの芸能を絶やすことだけはしたくないという一心で常にやってきたので、もうそれだけです」

請戸地区は、原発事故後、一時避難区域となり、その間、地元の人たちは仮設住宅で踊りを披露するなどして祭りを守り続けてきました。守り継いできた伝統が、地元の人たちの心のよりどころとなっています。