「犯人を見たい」と1万人

その結果、犯人は身代金の受け取りを断念し、逃走しました。
その2か月後、大阪に潜伏していた容疑者が逮捕されました。

若く、サラリーマン風で中肉中背、報道内容は確かに当たってはいました。

逮捕されたのは本山茂久容疑者。30代の歯科医でした。その身柄はすぐさま東京に移送されました。
その様子は連日のように報道され、本山容疑者を一目見たいと、東京の駅には野次馬たちが1万人も集まり、新聞ラジオも殺到し、大混乱となったといいます。

犯人を移送する警察は、大阪で、東京で、群衆に取り囲まれました。東京では1万人に達したといいます。

追い詰められた犯人は

その後の本山容疑者の証言は衝撃的なものでした。
彼は「報道により精神的に非常に追い詰められたため殺害した」と自供したのです。本山容疑者は逐一の報道で逃げられないと思い、雅樹ちゃんが逃走の足手まといになるとして、また証拠隠滅のために、殺害したと見られています。

本山容疑者は警察に対して「報道に追い詰められた」と証言しました。

また、事件発生から解決までの間、メディアや野次馬は被害者家族の自宅前に詰めかけ、家族の精神的負担を増大させました。警察の捜査情報も過度に報道され、犯人に有利な状況を作ってしまった可能性があることが問題視されました。

マスコミが報じるから野次馬が集まり、野次馬が集まるからますます報じられる、ある種の悪循環でした。